著者
石神 靖弘 後藤 英司
出版者
日本植物工場学会
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.228-235, 2008 (Released:2011-02-04)
著者
前田 智雄 前川 健二郎 戸田 雅美 大島 千周 角田 英男 鈴木 卓 大澤 勝次
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.83-89, 2008-06-01
被引用文献数
2 4

種々の光源の組合せによる補光がブロッコリースプラウトの生育およびポリフェノール含量に及ぼす影響を効率的に検討することを目的として,商業生産システムを模した実験装置を設計,製造した.ブロッコリースプラウトの胚軸長,生重,乾物重および総ポリフェノール含量に及ぼす種々の波長の蛍光管の組合せによる補光の影響を検討した結果,48時間の補光後に,1)白色蛍光管とブラックライト(UV-A);2)赤色蛍光管とブラックライトの組合せにおいて総ポリフェノール含量が暗黒や商業生産レベルの光強度に対して有意に高まった.一方,胚軸長はやや短くなったが乾物重には有意差は認められなかった.このことから,ブラックライトを組み合わせて補光を行うことで,抗酸化能を高めたスプラウトを収量や外観品質を損なうことなく生産できるものと思われる.
著者
村上 覚 末松 信彦 中村 新市 杉浦 俊彦
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.184-192, 2008-09-01
被引用文献数
1 1

2001年度から2004年度の4年間,南伊豆地域8か所で調査した開花日(2分咲き日)と気温29 組に基づき,気温を説明変数とする単回帰による方法,温度変換日数法,オウトウの自発休眠覚醒予測式を利用して休眠を考慮に入れた方法により南伊豆地域の'カワヅザクラ'の開花予測を試みた.それぞれの方法で算出した推定開花日と実際の開花日との差を二乗した平均値の平方根(RMSE)を計算した結果,単回帰による方法では7.36,温度変換日数法では7.94,休眠を考慮に入れた方法では12.22という結果となり',カワヅザクラ'の自発休眠覚醒期をオウトウの予測式を用いて推定することは困難であった.単回帰による方法では「カワヅザクラまつり」の主会場である河津町田中では約5日,「みなみの桜と菜の花まつり」の主会場である南伊豆町青野川堤防では約4日であった.'カワヅザクラ'の開花期間が比較的長いことを考慮に入れると,現場での活用が期待される.しかし,誤差は大きいので,今後も開花予測法については検討することが必要と考えられた.
著者
浜本 浩 黒崎 秀仁 岩崎 泰永
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.97-101, 2015
被引用文献数
2

深度データを面的に収集できるKinect for Windowsを用いて,作物個体群の受光態勢を評価することを試みた.Kinectで撮影した作物の深度デ-タを表計算ソフトで解析し,作物の占有する区画における葉の写っている面積割合(Ra)を算出した.Raは上方からみた水平受光面の大小を示す.また,これを深度別に分け,作物個体群の最高点から1 cmごとに積算し(Ra'),これがRaの80 %の値になるまでの距離を葉の分布している距離で除した割合(Rp)を算出した.Rpは作物個体群への光の浸透性の強弱を示す.模型による疑似作物個体群やポット栽培のトマト個体群を用いた解析では,総葉面積(受光面積)の大きい場合にRaも大きくなり,個体群の光透過率が低い処理ほどRpが小さくなった.また,パプリカ個体群では,Raが早朝増加,薄暮時減少,Rpが早朝減少,薄暮時増加を繰り返したが,これは薄暮時には早朝と比べて葉が下垂したためと考えられた.
著者
高山 真策 植松 聖陽 秋田 求
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.25-29, 2014

自然植生下に成育するイヌガヤを材料にして,光条件が成育とアルカロイド組成の特性におよぼす影響について検討した.イヌガヤは,光強度(相対値)が弱く,多くの場合太陽直射光の20 %以下の環境で成育していた.イヌガヤの成育には光強度(相対値)が影響しており,樹高と樹径は光強度(相対値)と正の相関があった.また,樹高と樹径との間には高い相関があった.環境の異なる2地域(静岡県富士郡と沼津市)のイヌガヤを分析した結果,光強度が弱い環境に成育する静岡県富士郡のイヌガヤにはHHTが多く,光強度が強い環境に成育する沼津市のイヌガヤにはHTが多かった.アルカロイドの組成に光が関与することが考えられたので,太陽直射光下に成育する樹木個体を選抜し,太陽直射光の照射下にある南側(高照度環境)と太陽光がさえぎられて散乱光が照射されている北側の枝(低照度環境)のアルカロイド組成を比較した結果,前者ではHT,後者ではHHTが多かった.
著者
庄子 和博 後藤 英司 橋田 慎之介 後藤 文之 吉原 利一
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.107-113, 2010-06-01
被引用文献数
6 17

明期の青色光強度がアントシアニン蓄積に影響するかどうかを調べたところ, 明期の青色光量を増やすとアントシアニン蓄積は促進されるが, 処理20日目までは効果が持続しなかった. 次に, LEDランプを用いて連続光条件における赤色光と青色光の割合がアントシアニン蓄積に及ぼす影響を調べた結果, アントシアニン含量は青色光の割合が高まるほど大となることが示された. そこで, アントシアニン生合成の光質応答を分子レベルで理解するために, レッドリーフレタスから単離できたアントシアニンの生合成遺伝子群について(<i>CHS</i>, <i>F3H</i>, <i>DFR</i>, <i>ANS</i>, <i>UFGT</i> )リアルタイムPCR法で発現解析を実施した. その結果, R100区では5遺伝子とも発現は認められなかったが, B100区とR50B50区では<i>CHS</i>, <i>F3H</i>, <i>DFR</i>, <i>ANS</i> および<i>UFGT</i> の発現が4時間までに上昇し, 48時間では低下した. <i>F3H</i>, <i>DFR</i>, <i>ANS</i> の発現が24時間までに上昇し, 48時間では低下したが, <i>CHS</i> と<i>UFGT</i> の発現は大きく変化しなかった. これらの結果より, レッドリーフレタスの光質に対するアントシアニンの生合成や蓄積に関する制御機構には, 赤色光と青色光の割合が密接に関係していることが明らかとなり, 特に<i>CHS</i> と<i>UFGT</i> の発現が青色光のPPFレベルに敏感に応答しているものと考えられた.
著者
マンギタ ワンナ ピンカウ プラパパン カチョンパドングキッテイ ヨンサク 大沢 良 久島 繁
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.89-95, 2007-06-01
参考文献数
30

ソバ植物の種内雑種植物体の試験管内での交雑育種を検討した.圃場での良好な組み合わせであるキタワセソバと福井在来ソバを用い,試験管内で誘導したキタワセソバ( 母方,秋型) の花芽に,ポット栽培福井在来ソバ( 父方,夏型) の花粉を試験管内人工授粉させ,受粉花芽・胚珠を培養して試験管内再生植物の育成を試みた.培養体をココナッツミルクを含む培地で培養することにより,飛躍的に試験管内第2 世代植物の再生率が高まり,連続的な試験管内世代交代が可能となった.<BR>得られた再生植物体はザイモグラム,RAPD,数種の形態および農業形質から雑種と判断された.<BR>バッククロスを3 回繰り返し,母方形質を理論的に94% 持つキタワセソバ個体を育成した.初回の交雑と3 回のバッククロスを終了するまでに掛かった期間は240 日であった.試験管内での第2 世代植物体形成期間(1 世代期間に相当) は55 ~ 60 日で,試験管内世代交代期間は圃場のそれより速いと考えられた.試験管内再生植物の大量迅速育苗による系統確立は可能と考えられた.
著者
尾島 由紘 岩本 嗣 西岡 求 紀ノ岡 正博 金谷 忠 浅田 雅宣 田谷 正仁
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.176-183, 2008-09-01
参考文献数
21

植物不定胚の同調化は,その後の植物体への安定な再生を実現する上で重要である.本研究においては,アスパラガス(A. officinalis L.) &lsquo;ウェルカム&rsquo; から誘導された不定胚の同調化手法の確立ならびに長期継代培養中における不定胚の形態および遺伝的安定性の評価を行った.不定胚の誘導については,ECの初期PCVに依存して,得られる不定胚のPCVが変化することがわかった.ECの初期PCVが1.0&times;10<sup>-2</sup>m<I>l</I>/100 m<I>l</I>-mediumのとき,誘導後42日後の不定胚PCVが43 m<I>l</I>/100 m<I>l</I>-mediumと最大に達した.このとき得られた不定胚をメッシュで分級したところ,心臓胚から魚雷胚へ移行する不定胚を多く含む画分が60.6%となり,不定胚誘導に適した条件であることがわかった.さらに,継代培養中の不定胚の投影面積ならびに円形度は,不定胚の生長過程を評価するパラメータとなりうることがわかった.誘導42日後の不定胚を用い,メッシュを組み合わせた分級収集を行ったところ,約90%の不定胚が平均投影面積1.0-4.0 mm<sup>2<sup>,円形度1.2-1.6の領域に含まれ,不定胚が同調化されていることが示された.しかし,さらに長期継代培養を続行したところ,誘導70日後において不健全な形態を示す不定胚の存在が認められた.誘導後42日後と70日後の不定胚から再生された植物体を対象にRAPD-PCR法により遺伝子解析を行ったところ,長期継代を経た一部の不定胚は遺伝子レベルで変質している可能性が示唆された.
著者
斎藤 裕太 清水 浩 中嶋 洋 宮坂 寿郎 大土井 克明
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.25-30, 2012-03-01
参考文献数
20
被引用文献数
4

植物工場での栽培に適した光質の評価を行うため, 供試植物に&lsquo;チマサンチュ&rsquo;を用いて赤色光をベースとし青色光, 緑色光を加えた数種の光質条件下で栽培を行った. 赤単色光および赤緑混合光は生体重の増加に有効であり, 赤青混合光は茎長抑制に有効であることが明らかになった. 本研究の供試植物では青色光による草姿改善の必要性は無く, 節電の観点からも赤単色光のみで十分栽培可能であることが明らかになった.
著者
大橋 兼子 敬子 小川 瑛利子 大野 英一 渡邊 博之
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.132-141, 2013-09-01
参考文献数
16
被引用文献数
4

LEDによる赤色光,青色光および赤青混合光あるいは蛍光灯による白色光(コントロール)を利用して,シソ,ルッコラおよびコリアンダーを栽培した.成育調査と精油成分含有量の測定結果から,光質のコントロールによって,生食用ハーブの機能性あるいは品質を向上させることが可能なのか検討を行った.<br>本論文で設定された環境条件下においては,シソの栽培において,早く大きく成長させるのは白色光であった.青色光には赤色光に比べてperillaldehyde含有量を向上させる作用があることが分かった.ルッコラの栽培において,早く大きく成長させるのは白色光であった.青色光には赤色光に比べて甘味成分であるanethole含有量を向上させる作用があった.このことから,青色光強度を増すと甘味が増し,青色光強度が低減すると甘味が低減する分,アーモンド風味が増す作用をもつ可能性が考えられた.コリアンダーの栽培においては,赤色光が最も大きく成長させた.さらにコリアンダーの青臭い特有の風味をあたえる (E)-2-decenalおよび(E) -2-dodecenal含有量が赤色光下で最も向上した.赤色光はコリアンダーの成育も風味も向上させる効率的な光であることが分かった.<br>以上のように,植物種ごとに生産に効果的な光条件は異なるが,光質制御によってハーブの品質を向上させることは可能と判断した.
著者
谷垣 悠介 濱中 将人 西野 祐輔 大和 義幸 秋田 求
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.160-162, 2014

ガス透過性フィルムを用いて作製した容器に液体を入れ高い酸素透過性を確かめた.ガス透過性フィルム製チューブの両端を封じた簡易な培養容器を用い,静置した液体培地中でヒメツリガネゴケ(<I>Physcomitrella patens</I>)が良好に生育することを確かめた.ガス透過性フィルムの有用性が再確認された.
著者
近藤 謙介 池田 奈美枝 樫原 千枝 北村 義信 岩崎 正美 恒川 篤史 松添 直隆
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.15-21, 2010-03-01

高温期における再生紙マルチの利用がミズナ2品種'京みぞれ'と'晩生白茎千筋京水菜'(以下, '白茎')の生育, アスコルビン酸含量および硝酸イオン濃度に及ぼす影響を検討した. 処理区は白色と黒色の再生紙マルチを用いた紙(白)区と紙(黒)区, シルバーポリマルチを用いたシルバー区, さらに裸地区を設け, 計4処理区とし, 露地および雨よけハウス内でそれぞれ栽培した. 栽培期間中で最も気温の高かった日の地温および平均最高地温が最も低かった区は露地とハウス内ともに紙(白)区だった. 再生紙マルチの昇温抑制効果はハウス内よりも露地で大きかった. 欠株率はマルチ処理区間に差は認められなかった. 生育は紙(白)区が最大で, その要因としては処理区間の土壌含水比に差がなかったことから, 再生紙マルチの地温上昇抑制効果が大きく関与したと考えられる. また, 品種間を比べると'白茎'は'京みぞれ'に比べ欠株率が低く, 生育が良好だった. アスコルビン酸含量は'白茎'の紙(白)区が裸地区に比べ有意に多かった.一方,硝酸イオン濃度は処理区間に差はなかった.以上の結果から, 高温期における再生紙マルチの利用は, ミズナの生育を促進できることが明らかとなった. また, 欠株率, 生育およびアスコルビン酸含量に品種間差が認められたことから, 高温期栽培に適したミズナの品種の選定・育成も必要と考えられた.
著者
高辻 正基
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.2-7, 2010-03-01
被引用文献数
10 27

完全制御型植物工場の現状。日本の平成20年度の食糧自給率はカロリーベースで41%、穀物自給率に至っては28%でOECD諸国の中では最低である。また休耕地と耕作放棄地は150万ヘクタールにのぼるとも言われている。これらはたしかに深刻な事態ではあるが、工業が発展した先進国で農業人口が急減し農業が衰退するのは必然であろう。これは何も日本に限ったことではないのであるが、日本の特殊性は農地当りの人口密度が極めて高いことにある。そのため自給率の低さが目立ち、休耕地の増大が問題視される。日本農業の新しい展開としては、その零細性(大規模化が困難)と工業のポテンシャルと合わせて、高付加価値農業(植物工場とバイオ農業)に向うのが有力であると考えられる。天候や場所に捉われずに作物を大量生産できる植物工場は日本に適した農法である。異常気象が来ようが狭い土地であろうと、都会のビルの中でも大量生産でき、また知的営農であるから若年層の就農希望も期待できる。ただ現状の問題点は対象が主に野菜であるから自給率にはほとんど寄与できないことと、初期導入コストと生産コストがかなりかかることである。植物工場とは野菜や苗を中心とした作物を施設内で光、温湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を人工的に制御し、季節に関係なく自動的に連続生産するシステムをいう。ほとんどの植物工場で制御しやすい水耕栽培を使っている。しかし土壌栽培による植物工場も可能で、最近では有機植物工場の試みもある。植物工場野菜の特徴としては無農薬、洗わずにそのまま食べられる、長持ちする、えぐみや苦味が少なく食べやすい、ロスが少ない、などが挙げられる。最近の消費者の安全・安心への志向、健康志向にピッタリである。
著者
仁科 弘重
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.236-241, 2008-12-01
参考文献数
17
被引用文献数
2 8

室内に植物を配置することによって、室内に潤いが生まれ、人間は心が癒され、より快適に過ごせることになる。このことを期待して、家庭やオフィスなどの室内に植物を配置することが多くなっている。この効果はグリーンアメニティと呼ばれており、本誌(植物環境工学)の掲載分野の一つとされている。筆者は、15年以上前からグリーンアメニティの研究を行っており、2000年には「グリーンアメニティに関する研究」で日本生物環境調節学会学会賞を授与された。グリーンアメニティには、温熱環境調節・快適性向上効果心理的効果、視覚疲労緩和・回復効果、空気浄化効果の4つの効果があると考えられ、筆者らは、これらの効果それぞれについて実験、研究を進めている。例えば、温熱環境調節・快適性向上効果の室内温湿度測定の様子を、Fig. 1(A)に示す。また、最近は、主に高齢者を対象とした園芸療法も注目を集めつつあるため、筆者らも、グリーンアメニティの応用分野の一つとして、園芸療法の心理的効果に関連した実験、研究を行っている。さらに、オフィスワーカーの働く空間にも快適性が求められるようになってきたため、オフィスにおける快適性向上についての実験も行っている。本稿では、グリーンアメニティの効果の一つである心理的効果について、その評価方法および筆者らが最近行った研究を概説する。
著者
古在 豊樹 コザイ トヨキ Toyoki Kozai 全 昶厚 大山 克己
出版者
日本植物工場学会
雑誌
SHITA REPORT (ISSN:09186204)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.14-29, 2000
被引用文献数
3

第10回SHITAシンポジウム講演予稿集平成12年1月19日東京、中央大学駿河台記念館主催: 日本植物工場学会 協賛: 植物工場普及振興会, 日本生物環境調節学会, 農業機械学会, 農業施設学会, 日本農業気象学会, 計測自動制御学会, 農業電化協会, CELSS学会, 化学工学会, 照明学会, ファイトテクノロジー研究会
著者
安場 健一郎 黒崎 秀仁 高市 益行 大森 弘美 川嶋 浩樹 星 岳彦
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-35, 2010-03-01
被引用文献数
2

ユビキタス環境制御システムを導入した自然換気温室における細霧噴霧と換気窓の開度制御による, エンタルピを指標とした温湿度管理法に関して検討を行った. 天窓の開度の調整は2分ごとに行い, 温室内のエンタルピを60 kJ kg<sup>-1</sup>とすることを目的とした. 温室内の目標エンタルピは気温が23℃の時に相対湿度が83%となる値である. 温室内外の温湿度と日射量の情報から熱収支法により温室内の換気率を計算し, また, 温室内のエンタルピが60 kJ kg<sup>-1</sup>とするための目標換気率を計算し, 新たな天窓の開度に制御を行った. 細霧は天窓制御時に相対湿度の目標値を下回ったときに作動し, 最大90秒を目処として, 相対湿度の設定値を上回ったときに停止した.<BR>2008年11月1日から6日の10時から14時の間に制御を実施した. 温室内の平均気温は23~24℃となり, 相対湿度は設定した値より1から2%程度高く推移した. 11月2日の温室内のエンタルピは平均値では60.2 kJ kg<sup>-1</sup>となり目標値に近くなったが短期間での値の変動がみられた一方, 屋外のエンタルピは温室内よりも低く, 変動も小さくなった. さらに高精度の制御を実施するためには制御間隔を短くする必要があると考えられた. 温室の換気率は1 m<sup>3</sup> m<sup>2</sup> min<sup>-1</sup>以下となり, かなり低い値を示しため, 本法で示した温湿度管理を実施することで効率的な炭酸ガス施用を実施できると考えられた.
著者
村上 覚 加藤 智恵美 稲葉 善太郎 中村 新市
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.132-136, 2007-09-01
被引用文献数
3 7

早咲きザクラである'カワヅザクラ'の自発休眠覚醒期と休眠解除に必要な低温要求量を調査した. 2003年度と2004年度のそれぞれ10月20日, 11月5日, 11月26日, 12月5日, 12月26日に河津町田中に植栽されている'カワヅザクラ'から切り枝し, 最低気温15℃の温室内に搬入して水挿しした. 花芽の開花率は10月下旬から12月上旬まで, 葉芽の展葉率は, 10月下旬から12月下旬まで, 温室への搬入が遅くなるほど上昇した. 開花率については11月5日処理と11月26日処理の間で明らかな差がみられ, 展葉率については11月5日処理と12月5日処理との間で明らかな差がみられた. このことから, 花芽の自発休眠は12月上旬には既に覚醒しており, 葉芽についてはそれ以降であることが明らかになった. また, 自発休眠覚醒に影響を及ぼす気温は他のサクラと比較して高いことが示唆され, これらのことが早咲きの一因と推察された.
著者
清水 浩 對馬 ゆかり 小松 佳菜子
出版者
日本植物工場学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.2-7, 2008-03-01
被引用文献数
2 4

ノースポール(<I>Chrysanthemum paludosum</I> 'North Pole')を対象として,3通りの昼夜間温度差(DIF)条件, +10 DIF(明期25°C/暗期15°C), 0 DIF(20°C/20°C), -10 DIF (15°C/25°C)で下胚軸の伸長成長量を画像計測システムを用いて10分毎に6日間連続計測した. その結果, 計測開始2日目(播種10日後)の一日の伸長成長量は+10 DIF で0.5 mm, 0 DIFで0.42 mm,-10 DIFで0.2mmとなり, DIF値が大きいほど一日の伸長成長量が大きくなった.<BR>明期および暗期における伸長成長量は, 明期にDIF値が大きくなると伸長成長量も大きくなる傾向が認められるが, 一方, 暗期ではDIF値による伸長成長量の違いは認められなかった. これらの伸長プロフィールを画像による連続計測データから解析したところ, 伸長成長パターンについては+10 DIFと0 DIFの伸長成長パターンはよく似ており, ぞれぞれ明期開始3時間後, 5時間後に顕著な伸長が認められれるが, -10 DIFでは明期暗期ともに顕著な伸長成長は認められず, 明期開始8時間後(14時頃)に若干の増加傾向が観察された程度であった. また, 顕著な伸長成長の持続時間もDIF値が大きいほど長いことが明らかとなり, 明期の伸長成長量がDIF環境下におけるノースポールの一日の伸長成長量に大きな影響を与えていることが明らかとなった.