著者
伊藤 肇躬
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

PSE豚肉のような異常肉質を惹起しやすい傾向を有するストレス感受性豚乃至豚悪性高熱症は遺伝性疾患であって、その疾患の有無は現在ハロセン麻酔時の四肢のケイレン等の有無により判定されているが、遺伝学に立脚した判定法の開発が待たれている。筋小胞体のカルシウム・チャンネルであるライアノジン・レセプターの生理機能の異常により誘起される豚のストレス感受性乃至悪性高熱症の分子遺伝学的解析を行うことを目的として、ライアノジン・レセプター遺伝子のうち、そのfoot領域及びチャンネル部位に相当する部分をPCR法により増幅を行い、遺伝学的変異の有無を解析した。その結果、foot領域の少くとも一ケ所に変異箇所が存在することが見い出されると共に,PCR増幅物がcDNAの塩基数より明らかに多いことから、ライアノジン・レセプター遺伝子中にはイントロンが存在することも明らかにされた。また、ハロセン・テストにおいて陰性と判定される豚のゲノムDNAのPCR増幅物中にも陽性のそれと同様の変異が見い出されたことから、ゲノムDNAの解析法の方がハロセン・テスト法よりもストレス感受性豚検出法として優れていることが明らかとなった。これらのことから、ストレス感受性豚のDNA診断を目的とする特定DNA断片を用いたサザンハイブリダイゼーションによるDNA診断法開発への道筋が開かれようとしていることが示唆された。