著者
桃田 哲也 伊藤 誠子 小林 謙 三舛 信一郎 国屋 輝道
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.453-458, 1993-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

私たちはバルプロ酸ナトリウム (VPA) 投与中に急性膵炎を繰り返した症例を経験した.症例はてんかんのためVPA投与約4年後に急性膵炎を発症した.一度は保存的療法により短期間で合併症もなく軽快したため, その後もVPAを服用させていた.しかしその2カ月後, 再度急性膵炎を発症した.胸水貯留も認め播種性血管内凝固症候群 (DIC) も併発したが, 保存的療法で軽快した.VPAによる急性膵炎と考え, 抗けいれん剤を変更し, 現在のところ急性膵炎の発症を見ていない.VPAによる急性膵炎の報告は比較的少ないが, 電撃的な経過で死に至ることもありVPA治療中には十分注意が必要と思われる.