著者
伊賀 泰恵
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
研究紀要 /広島大学附属中・高等学校 (ISSN:13444441)
巻号頁・発行日
no.46, pp.67-77, 2000-03-31

英語教育の目標にコミュニケーション能力の育成が掲げられているが, 単語や文法を使いこなす術を習得することだけであろうか。言葉の背景にある生活の相違を理解して興味をもつことが必要であると考える。外国の文化を理解するために, その言語が話されるその地に住んでみるといいのだが, ほとんどの学習者にとって, まず, その機会はない。そこで, 文化的背景を知る上で, 学習者にとって, できるだけわかりやすい教材は何かと考えてみると外国の絵本が思い浮かんだ。絵本は最も初歩的に異文化に触れ得る教材であろう。以上のような発想に基づいて外国の絵本の日本語版翻訳と日本の絵本の英語版翻訳を生徒に課する学習計画を考案し, 実践してみた。その活動過程の楽しさと想像をふくらませて間接的経験をすることで, 興味と意欲をひきだせないものかと考えた。その結果, 生徒は絵本を積極的に選択し, 集中して翻訳作業をし, オリジナル翻訳を作成したという達成感を得たようである。楽しく学べたことが, コミュニケーションへの自信にも繋がると期待する。