著者
阿部 哲久
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
no.62, pp.3-10, 2016-03-31

政治的教養の育成をめざした授業の開発と実践研究を行った。授業はジョシュア・グリーンの理論に基づいて構成した。「トロッコ問題」などの思考実験によって実感を持って考えさせること,活動に加えて人間の道徳的判断や道徳的価値観についての知識を学ぶことで自分自身の道徳的判断を客観的にとらえさせることを意図した。実践の結果を分析したところ,政治的教養の基盤として目標に設定した「一つの見解が絶対的に正しく,他のものは誤りであると断定することは困難である」という見方を育成する上で効果があることが示唆された。
著者
伊賀 泰恵
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
研究紀要 /広島大学附属中・高等学校 (ISSN:13444441)
巻号頁・発行日
no.46, pp.67-77, 2000-03-31

英語教育の目標にコミュニケーション能力の育成が掲げられているが, 単語や文法を使いこなす術を習得することだけであろうか。言葉の背景にある生活の相違を理解して興味をもつことが必要であると考える。外国の文化を理解するために, その言語が話されるその地に住んでみるといいのだが, ほとんどの学習者にとって, まず, その機会はない。そこで, 文化的背景を知る上で, 学習者にとって, できるだけわかりやすい教材は何かと考えてみると外国の絵本が思い浮かんだ。絵本は最も初歩的に異文化に触れ得る教材であろう。以上のような発想に基づいて外国の絵本の日本語版翻訳と日本の絵本の英語版翻訳を生徒に課する学習計画を考案し, 実践してみた。その活動過程の楽しさと想像をふくらませて間接的経験をすることで, 興味と意欲をひきだせないものかと考えた。その結果, 生徒は絵本を積極的に選択し, 集中して翻訳作業をし, オリジナル翻訳を作成したという達成感を得たようである。楽しく学べたことが, コミュニケーションへの自信にも繋がると期待する。
著者
一ノ瀬 孝恵 日浦 美智代
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
研究紀要 /広島大学附属中・高等学校 (ISSN:13444441)
巻号頁・発行日
no.50, pp.37-44, 2004-03-01

中学校選択教科「家庭」では, 昨年度から「植物に親しむ」ことをテーマに「梅シロップ作り」「ハーブの栽培」「染色」「そば作り」「みそ作り」の授業を展開し, それらの中から「そば作り」に関する教材開発を図った。ゲストティーチャーの大久保氏から教わった30分でできるそば打ちの授業で, 生徒はそばについて興味を持ち, 家庭で積極的にそば打ちを行うようになった。今年度は, 生徒に家庭で気軽に実践できるそば打ちを体験させながら, そばアレルギーの生徒に対応すべく新たなメニューの開発を試みたので報告する。
著者
沓脱 侑記 内海 良一 平松 敦史
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
no.67, pp.61-66, 2021-03-31

コロナ禍による全国一斉休校のなか,化学のオンライン授業の試みとして,授業動画の作成と配信を行った。本稿では対面授業とオンライン授業の違いを踏まえながら,オンデマンド型教材の開発過程や視聴した生徒の反応などについてまとめ,化学におけるオンライン授業のあり方について考察したい。
著者
湯浅 清治
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
研究紀要 /広島大学附属中・高等学校 (ISSN:13444441)
巻号頁・発行日
no.46, pp.23-29, 2000-03-31

本報告は, 地理教育の基礎である地図を初等・中等教育の教育課程においてどのように取り扱うかを検討する1試案である。地図は大きく, 中・小縮尺図(ほぼ都道府県レベル以上)と大縮尺図(身近な地域レベル)に分けて考えるととらえやすくなる。社会科・地理教育関連の教科書・副教材等における扱われ方をみると, 様々な場面で地図が使用されていること, そして中・小縮尺図が圧倒的に多く利用されていることに気付く。地図というものが児童・生徒にとって様々な機会で情報源・分析や発表手段等に使用されている状況下で, その効果を高めるためにどのような地図教育が行われたらよいのかを, 初等・中等教育を通したカリキュラムにおいて様々な角度から調べようとするものである。近年, 中等教育6年制或いは小中高一貫の観点が取り上げられ始めたところであり, 地図教育のカリキュラムに関する検討も少ない現状で, 今から求められる趨勢にあるといえよう。「地図が重要」, 「地図こそが地理(教育)の特徴」といいつつ, 地図の存在を自明のものとして使っている現状と判断し, まさにその現状が「地図が不得手」「地図に親しみを持たない」生徒を多くしている原因の一つと考える。こうした現状を鑑み, 小・中・高等学校の12年間における地図の理解及び活用を整理するマトリックスづくりは地理教育において極めて有益である。本報告は, その第一歩をしるす短報として, 中学校における地形図学習の一つのあり方を提示する実践報告である。
著者
三根 直美
出版者
広島大学附属中・高等学校
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:13497782)
巻号頁・発行日
no.63, pp.126-112, 2017-03-31

和歌は古典文学作品のほとんどにでてくるが、その学習目標はシラバスに明確に記載されていない。加えて、生徒にとって和歌を理解し鑑賞することは難しい。その理由の一つは、和歌はわずか三十一文字で構成されており、和歌に含まれる情報は十分とは言えないからである。また、和歌のメッセージは様々な修辞技法によって表現されているのも理由の一つである。本研究では、検定教科書の和歌を分析し、一つの指導アプローチが提案されている。具体的には、『伊勢物語』、『土佐日記』、『今物語』、『大和物語』、『源氏物語』、『無名抄』、『蜻蛉日記』、『紫式部日記』に含まれる和歌を①和歌のテーマ、②和歌の読み手と受け取り手の人間関係、③修辞技法の観点から分析した。その結果、以下のことが明らかになった。(1)和歌のテーマは多岐にわたっている、(2)和歌は様々な形式で詠まれている、(3)多様な修辞技法が用いられている。数多くの種類と形式の歌が教科書では扱われているため、生徒の理解を促すために、授業者は和歌の指導の際には明確な目標を設定する必要がある。加えて授業者は和歌を系統的にかつ段階的に提示して、授業をしていく必要があろう。