- 著者
-
伊集院 直邦
宮内 睦美
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1991
我々はこれまで科研費の補助のもとに、内毒素の歯週組織破壊に及ぼす影響をラットを用い実験病理学的に検索し種々の知見を得てきた。それらの知見の一つとして、内毒素は歯根膜線維芽細胞によるコラーゲン原線維の貧食作用の著しい亢進をきたす可能性を示唆する所見を得た。そこで、そのことをさらに組織化学及び組織計測的な検討を加え確認することを試みた。その結果、歯根膜線維芽細胞は生理学的状態においてもコラーゲン原線維の貧食能が高く、さらに、内毒素によりその作用が有意に亢進される事が明らかになり、辺縁性歯周炎における歯周靱帯の破壊に大いに関与することが示唆された。また、このことをラット臼歯歯根膜より線維芽細胞株を樹立し培養歯根膜線維芽細胞を用いin vitroの系でも証明することを試みた。その結果、顎骨より抜去したラット臼歯歯根より、4種類の歯根膜由来継代可能な培養細胞を得ることが出来これらの細胞は短紡錘形ないし多角形をし、いずれも歯根膜線維芽細胞に特徴的な性状であるアルカリホスファターゼ陽性を示す細胞を含み、免疫組織学的にビメンチン、ケラチン、オステオカルシンに陽性を示すと共に、アリザリンレッドS染色により石灰化能を有することが示された。しかしながら、これら細胞をコラーゲンゲル中で立体培養したところ、細胞内へのコラーゲン原線維の取り込み像を認めたものの本研究の遂行の為には不十分な所見しか得られなかった。コラーゲンゲルの濃度培養条件、観察方法を検討したがin vitroの系で内毒素が歯根膜線維芽細胞のコラーゲン原線維貧食能の亢進を来すことまで証明することは出来なかった。引続き、ラット尾部より調整した生のコラーゲンを用いる事や、培養液中にコラーゲン形成や石灰化等に重要な因子であるアスコルビン酸、β-グリセロリン酸、テキサメサソン等の添加も考慮しながらさらに検討する予定である。