著者
清久 正夫 佃 律子
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-11, 1966

大豆と金時の豆をそれぞれ主体とし,エビオス,アスコルビン酸および防腐剤を加えて寒天で固めた半合成飼料により,ハスモンヨトウを飼育した.1.かような半合成飼料で飼育した場合は蛹化率や生育率などがサツマイモの葉で飼育した対照区より劣り,幼虫の発育期間が長くなるが,発育した蛹の体重や,成虫の産卵率,その卵の孵化率,蛹の期間,卵の期間は対照区との間に概括的にいえばそれほど大きい相違がない.2.大豆と金時-寒天飼料との間に多少の相違はあるが,どちらがよいかは決定しにくく,両飼料とも人工飼育用の飼料として適当と思われる.3.これらの飼料で飼育した幼虫はサツマイモの葉で飼育したものよりその期間がやや長くかかり,大部分のものが6回の脱皮を行ない,7令を経過した.4.累代飼育した結果蛹化率や生育率などは初期世代では低いが,世代の推移に伴ない増加し,幼虫期間が短かくなる.これに対し産卵率や孵化率はかなり低下することがある.前者の原因はこの昆虫が新食物に適応することと新食物による個体群の淘汰により,後者の原因は必然的に生ずる同系交配の害に起因するものと推論した。