著者
福本 一郎 根本 俊光 佃 朋子 越塚 慶一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.118, no.3, pp.201-205, 2015-03-20 (Released:2015-04-17)
参考文献数
14

当科において2009年10月から2011年12月の27カ月間に急性感音難聴として入院加療を行った95例を検討し, 診断後に聴力が悪化した症例とその他対照群とを比較した. 聴力悪化の条件は250Hz から4,000Hz の5周波数の聴力閾値平均が10dB 以上悪化, ないし連続した2周波数で各15dB 以上悪化したものとした. 悪化群は95例中22例 (23.2%) で, 割合については過去の報告と大差はなかった. 突発性難聴の重症度分類を用いると, 悪化群22例は対照群73例に比して難聴のグレードは高かったものの, 聴力予後は不良ではなかった. 22例の中にはステロイド依存性難聴 (6例) や内耳窓閉鎖術施行例 (4例) がみられたが, 外リンパ瘻疑い症例も含め原因不明なもの (10例) も多く認めた. 急性感音難聴と診断された後に聴力が悪化した場合は, 副腎皮質ステロイドの慎重な漸減や内耳窓閉鎖術など, 症例に応じた治療法の選択が重要であると考えられた.