著者
位守 弘充 中村 宏 朴 泰祐 中澤 喜三郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.2612-2623, 1993-12-15
参考文献数
16
被引用文献数
16

大規模科学技術計算では、データ領域が非常に大きくデータの局所性が少ないため、キャッシュメモリが有効に働かない、そのためスカラプロセッサの実効性能はキャッシュミス時の主記億アクセスペナルティーにより低下する。本諭文では、主記憶のスループットを十分強化した上で、浮動小数点レジスタの構成としてスライドウィンドウ方式を採用し、既存のスカラアーキテクチャとの上位互換性を保ちながらレジスタ数を増やすことでこの問題を解決した新しいプロセッサを提案する。提案するスライドウィンドウ方式は、われわれが以前提案したレジスタウィンドウ方式と比較して、ウィンドウ構成をソフトウェアで制御できるという長所がある。本諭文ではスライドウィンドゥを用いた擬似ベクトルプロセッサのアーキテクチャと処理原理、ならびにベンチマークプログラムを用いた評価緒果を示す。主記億アクセスレーテンシーが20マシンサイクルの場合、擾案するプロセッサは通常のスカラプロセッサに対し約8借の性能向上が得られた。レジスタウィンドウ方式のプロセッサと比ぺても、レジスタ数が同じ場合、2倍の主記億アクセスレーテンシーを隠蔽でき、総レジスタ数が88のと妻、提案するプロセッサは60マシンサイクルの主記憶アクセスレーテンシーを隠蔽することができた。これらの評価結果より、提案するプロセッサは高速にベクトル計算を処理することができると結論できた。
著者
中村 宏 位守 弘充 中澤 喜三郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.669-680, 1993-04-15
被引用文献数
2

レジスタウィンドウ方式を用いてベクトル計算を高速に処理する新しい擬似ベクトルプロセッサを提案する。提案するプロセッサは、スーパスカラ方式を前提としているが基本的にスカラアーキテクチャであり、ベクトル命令やベクトルレジスタを有するものではない。スカラプロセッサではキャッシュミス時の主記億アクセスペナルティによる実効性能の低下が問題となる。ここで提案するプロセッサでは、データキャッシュの代りにレジスタウィンドウ方式により拡張した浮動小数点レジスタを採用し、さらに主記憶アクセスをパイプライン化することでこれを解決する。1つのベクトル命令の処理内容は複数のスカラ命令を垂直マイクロプログラム的に便用することにより擬似的に処理される。これらの特徴により、提案するプロセッサは既存のスカラアーキテクチャとの上位互換性を保つことが可能である。本論文では、提案するプロセッサのアーキテクチャとその処理原理を説明し、ベンチマークを用いた性能評価結果を示す、評価した結果、提案するプロセッサは主記億アクセスペナルティが20CPU Cycleの時に、拡張を行わないスカラプロセッサに対して約10借の性能、キャッシュヘのプリフェッチを行うプロセッサに対しても約1.4倍の性能を達成することがわかった。また、30CPU Cycle程度までの主記億アクセスペナルティをほぽ完全に隠せることがわかった、また、レジスタウィンドウの構成方法の相違による性能への影響についても検討した。これらの評価結果より、提案するプロセッサは主記億アクセスペナルティによって実効性能が低下することなく、高速にベクトル計算を処理できると結論できた。