著者
雨宮 俊彦 住山 晋一 増田 のぞみ
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.1-191, 2002-03-25

マンガは、複数のコマからなる折衷的、総合的な視覚表現のメデイアである。マンガでは、コマにさまざまな絵と言業がおさめられ、ページ内の並置的なコマ配置をつうじて物語りの時空が、視覚的に表現される。本論文では、こうしたマンガの表現の全体的な特徴を、心理学、メデイア論、記号論などの観点から分析をこころみる。第一部では、コマを構成する人物、背景、形喩、音喩、会話、叙述などの諸要索をレイヤーとして分解、抽出し、代表的な作品の表現の特徴を分析した。つづいて、分解した諸要素を複数の声部、コマを小節として、マンガの総譜表記をこころみた。第二部では、日本の少女マンガで複雑に発達した、コマ構成の歴史が概観され、最近多くみられるコマとコマの間に間白をつくらないコマ構成の意義の検討がおこなわれた。第三部では、構造記号論、夏目らのマンガ表現論、マクラウドのマンガ表現論などが批判的に検討され、マンガ表現論の枠組みとして、感性認知記号論の概要が提示された。