著者
守 如子
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.137-158, 2017-10-31

There are two significant genres of pornographic manga for young female readers in contemporary Japan. One is called “Teens’ Love” (or “Ladies’ Comics”), and the other is called “Boys’ Love”. The purpose of this study is to clarify the characteristic traits of female consumers of pornographic manga, focusing on the Seventh National Survey of Sexuality among Young People (2011). These surveys are conducted every six years by the Japanese Association for Sex Education (JASE). The study compares the girls aged 12 to 22 whose source of information about sex was manga with those who cited other sources. The former had a positive image of sex and sexual open-mindedness, and demonstrated more knowledge of sex. Extrapolating from this data, I argue that pornography for young female readers can have a positive effect.
著者
片桐 新自
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.43-60, 2007-03

2005年に公開された映画『ALWAYS三丁目の夕日』は老若男女に支持され、その年の日本アカデミー賞をほとんど独占した。昭和33年を舞台にしたこの映画がヒットしたことで、「昭和ブーム」とも言えるほどの注目が、昭和30年代を中心とした時代に集まっている。しかし、実はこの昭和への注目はここ1~2年前から生まれたものではなく、昭和が終わり、平成に入った頃に生まれ、着実に浸透してきたものだ。本稿では、この「昭和ブーム」の実態を紹介し、その原因、そしてその行方まで探求する。原因としては、(1)昭和が終わったこと、(2)昭和が長かったこと、(3)バブル経済が崩壊したこと、(4)ベビーブーマーが過去を振り返る年代に入ったこと、が主たるものであるということを明らかにする。本稿は、平成17年度関西大学学術研究助成基金(焚励研究)(テーマ:歴史的環境の保存と活用をめぐる社会的相互作用の研究)を受けて行った研究成果の一部である。〕
著者
雨宮 俊彦 水谷 聡秀
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.139-166, 2006-03-25

音感素は、音素と形態素の間のレベルに位置する、音象徴における基本単位である。英語やスウェーデン語などにおいては、二子音、あるいは三子音からなる多くの音感素の例が報告されている(Hinton, Nichols and Ohala, 1994; Abelin, 1999)。日本語は、二子音、三子音からなる音のパターンを欠いているので、そのような音感素も存在しない。Hamano(1998)は、日本語における各子音と各母音を音感素に設定し、日本語におけるオノマトペを組織的に分析している。Hamanoの分析は大変興味深いが、音感素と感性的意味の選択は分析者の直感によっている。この予備的研究で我々は、こうした基本問題に関する経験的な証拠を提供し、これを日本語における音象徴全般の問題に関連づけることを試みる。1)60のオノマトペが用いられた。オノマトペはすべてCIVIC2V2形式で、意味は感情に関連するものだった。12人の被験者がこれらのオノマトペを24の形容詞対により評定した。形容詞対24次元空間における60のオノマトペ間の距離行列がMDSにより分析された。2次元解が採用された。第1次元は明るさと、第2次元は硬さと最も高い相関を示した。2)157の日本語の拍が用いられた。99名の被験者がこれらの拍の明るさを、100名の被験者がこれらの拍の硬さを評定した。67の拍の評定平均値がカテゴリー回帰分析によって分析された。従属変数は明るさと硬さであった。独立変数は子音と母音だった。重相関係数は、明るさと硬さともにほぼ1であった。拍への影響は、明るさと硬さともに子音の方が大きかった。
著者
安田 雪
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.33-46, 2013-12

This paper examines how dissemination by demagogues occurred and how hubs contributed to the rapid and widespread information diffusion in social media, namely Twitter. Examining the 40,711 demagoguerelatedtweets we crawled using TTC, just after the Great East Japan Earthquake, the hubs' role in quick information diffusion was confirmed. Furthermore, we found that powerful information diffusion was causedby those we labeled "ignorant influencers" who have a large number of followers but display little knowledge. At a micro level, ignorant influencers do little harm; yet, at a macro level, when they are aggregated, they can cause serious information distortion in social media.本研究では、東日本大震災発生直後に収集した、「コスモ石油二次災害防止情報関連ツイートデータ」を用い、震災時におけるソーシャルメディア上の情報拡散行動及び情報拡散の状況の分析を行った。その結果、ソーシャルメディア上で個々のユーザーがもつ情報伝播力及び他者に対する影響力は、本人が保持する知識量とは完全に独立であり、ミクロレベルにおけるその差が、マクロレベルにおいてソーシャルメディア上で全体として拡散する情報の正確さや精度に著しい影響を及ぼすことを確認した。ソーシャルメディアを利用する個々のユーザーの影響力と、そのユーザーのもつ情報の正確さや知識量は独立であるにもかかわらず、一部の人々が著しい情報伝播力を持つことが、不正確な情報が膨大に拡散する重要な要因となっている。震災などの緊急時においては、可能なかぎり豊富で正確な知識をもつ人あるいは専門的な判断力を持つ人の直接的、間接的な情報伝播力をいかにあげるかが、ソーシャルメディアの発信する情報の信頼性を担保するために重要であることを指摘できる。結論として、ソーシャルメディア上の情報の拡散及び収束の困難性が、ソーシャルメディアのインフラともいえる人間関係そのもの認識及び統制の困難さに起因することを明らかにする。本研究の実施にあたっては、関西大学震災復興研究費の助成をいただいた。
著者
木村 洋二 ハンナロン チャーン 板村 英典
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.55-106, 2006-03-30

2004年5月10日の記者会見における皇太子の「人格否定」発言を日本の4大新聞がどのように報道したか、荷重グラフを作成して比較分析した。はじめに、同じく王室を戴くタイ国における王室報道を概観した。記事の割付けと面積をグラフィカルに表現するパターングラフ(NWP)を開発するとともに、「敬意度」を測定するために記事の開始段数を指標化(SRW)した。タイにおいてはすべての王室報道が第1段から掲載されるのに対し、日本の新聞にはかなりのバラツキが見られた。産経、読売が「敬意度」の得点が高く、朝日、毎日の得点が低いことがグラフ表示から明らかになった。
著者
浜田 明範
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.65-90, 2022-03-31

本論では J. S. ファーニバル、J. C. ミッチェル、M. G. スミス、F. バルト、C. レスリー、H. ベア、M.ストラザーンの議論の検討を通して、人類学において多元という概念がどのように使われてきたのか、その論理的な更新の展開を追跡していく。この作業を通じて、多元社会という概念が、多元主義、複数民族社会システムを経て、ポスト多元的な世界という発想へと結実した流れを描き出すことが本論の目的である。
著者
三浦 文夫
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.185-201, 2021-09-30

順調に成長を続けてきたライブコンサート市場も2020年に全世界的なパンデミックを引き起こした新型コロナウィルスにより大打撃を受け、779億円(前年比21.3%))いう惨憺たる結果になった。そこで、新たなサービスとしてオンライン配信ライブコンサートが注目され、さまざまなサービス形態で実施されている。そこで、具体的な事例を挙げ、音楽著作権、専属解放といった権利処理、配信技術などの課題を整理する。また、新たな音響体験を提供するイマーシブ(3D)オーディオについても触れ、その可能性について考察していく。
著者
与謝野 有紀 林 直保子
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.73-104, 2018-03-31

本稿では、絵画鑑賞のために美術館に行くという行為を大衆的な贅沢消費行為として位置づけ、美術鑑賞後の感想や一般的な美術鑑賞態度に関するデータから、美術鑑賞行為の類型の析出を試みた。ここで用いたものと同一のデータから、林・与謝野(2017)は、共分散構造分析をもちいて、美術館に行く人々がいくつかの類型に分けられる可能性を指摘しているが、その分析手法では類型を直接に識別することはできない。ここでは、クラスタ分析と潜在クラス分析という異なる分析視野をもった手法を並行で用い、計量社会学的にこの課題にアプローチした。クラスタ分析では、感想について2 つのクラスタが、態度については6つのクラスタが析出された。また、潜在クラス分析では、感想、態度ともに3つの潜在クラスが識別された。さらに、それぞれの類型に属する要因を、性別、年齢、美術館に行くきっかけ、他者に話す程度、メディアや権威への追従傾向を説明変数とするロジスティック回帰分析および回帰分析で検討した。これらの検討の結果、クラスタ分析と潜在クラス分析の両者で、「積極的評価型」と「消極的評価型」の二つの類型が共通に析出された。さらに、態度に関する潜在クラス分析の結果からも、感想と対応するような「能動的鑑賞型」と「受動的鑑賞型」の二つの類型が析出された。また、「積極的評価型」、「能動的鑑賞型」の類型の人々は、要因分析の結果、大衆的贅沢消費をしている人々と見做しうる特徴を示した。一方、「消極的評価型」、「受動的鑑賞型」の人々では、大衆的贅沢消費や誇示的消費概念だけでは理解することが難しく、その行為の背後にある意図の解明が今後の課題となっている。
著者
黒田 勇
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.141-163, 2020-03-31

This research note aims to reveal the history of the sports events operated by two newspaper companies, The Osaka Asahi and The Osaka Mainichi, in the early 20th century. It focuses on Minato Ward of Osaka City where several sport-events were held, the 6th Far Eastern Championship Games in1923, for example, and "Ichioka Paradise" was built in 1925, which consisted of several amusement facilities and the Japan's first artificial skating link.
著者
常木 暎生
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.59-85, 2008-12-20

This research proposes ansewrs to the following two questions: ①What do that brand advertisement express from the perspective of content analysis? ②Does a person who looks at brand advertisements have some kind of image, from the perspective of impression evaluation? Brand advertisement is not about the appeal of the goods themselves. Brand advertisement strengthens the brand image: its nobility, unfriendliness, elegance, beauty and privilege. The receiver of brand advertisements receives an impression which is similar to the image which the advertisements has expressed. The sender and the receiver of brand advertisements are sharing the same brand image.
著者
池田 進
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.165-168, 1993-09-05

かつてメッツガーが供覧した‘透明に見える山,と同じような視覚的配置を大阪の北方の山並に見出すことができる。それを撮影した写真を供覧し、その山が透明に見える理由を考察した。
著者
岩見 和彦 山本 雄二 関口 理久子 松原 一郎
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.133-184, 2007-03

発展や進歩の概念はつねにアンビバレントな意味を含んでいる。というのは、それらは未来によりよい状態を想定し、人や社会に希望を与える一方で、今われわれが生きている現在を未来への単なる途上として位置づけ、未来の幸福に資する限りで有意義であるような位置に押しとどめるからである。「成熟した社会」であると言われる現代にあって、「現在」がこのような貧しい意義しか持っていないとしたら、その「成熟」はことばのまやかしである。経済の成長に希望を託すことができない時代である今こそ「社会の成熟」を考える好機である。この論文では第2章から第5章まで、4人の研究者が「成熟」に関して考察している。第2章は、現代社会と個人における「成熟」概念の困難と希望を、理論的な側面から考察している。第3章は、戦後教育思想の浸透に伴って忘れられてきたもの、すなわち「暴力」の問題を事例に基づいて考察した。第4章は自伝的エピソード記憶の再生にかかわる性差と抑うつ気分の影響を実験によって調べ、検証した。第5章は、震災復興支援の経験から、物よりも社会関係資本の構築が支援策としては重要であることを論じている。
著者
片桐 新自
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-17, 2010-11-05

Sociology may be considered to be a diverse field, given the wide variety of topics on which research papers have been published in this discipline. However,if we identify the subjects taught to sociology majors in many universities,we may be able to say that we have a certain common understanding about the topics that we should teach these students.The contents of sociological education are gradually changing with the times. This paper is an attempt from the sociology of knowlege to understand the relationship between sociological education and the times,by investigating changes in the curriculum of sociology majors in the faculty of Kansai University,which has a history of more than 40 years from its foundation to the present. 社会学は多様だと言われる。確かに、発表される多種多様な研究論文を見る限り、まさに多様だと言えそうである。しかし、各大学の社会学の専門課程で教えられる授業科目に目をやると、社会学を専攻した学生に教えるべき内容には一定の共通認識があるようにも見える。そして、その社会学教育として教えられるべき内容は、時代の要請に応える形で少しずつ変化をしてきている。本稿は、40年以上の歴史をもつ関西大学社会学部社会学専攻の創設時から現在までのカリキュラムの変遷を追うことで、時代と社会学教育の変化の関係を捉えようとする、ひとつの知識社会学的試みである。
著者
黒田 勇
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-24, 2020-10-31

本論文は、明治後期に展開された新聞事業としての長距離走大会の3事例を紹介し、スポーツを新聞事業として確立、発展させていく経過と特徴を明らかにするものである。その際、とりわけ大阪毎日新聞が、鉄道会社と連携することで、郊外にスポーツの空間を確保しつつ、観客として読者を動員していき、さらに、オリンピックを含め国際大会への参加への情熱を高めていくが、その事業運営と報道の特徴を明らかにする。
著者
小川 博司
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.1-18, 2016-03-31

Ever since Theodor W. Adorno radically attacked popular music, popular music researchers have criticized Adorno and attempted to express their own positions. However, just because Adorno attacked popular music, it does not mean he was unable to observe popular music phenomena. Additionally, his observation of popular music phenomena is not necessarily out of date. In this paper, I regard Adorno as an Anti-Nori (Groove) theorist. By discussing Adornoʼs theory of popular music, I would like to derive academic points on Nori (Groove) in contemporary society. This paper is part of a critical review of prior research on “Nori (Groove) and Social Change”.
著者
山本 雄二
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.61-90, 2016-11-15

G.H.ミードの考えは多くの場合、誤解され、変形された上で日本のアカデミズムに受容されてきた。どのように変形されてきたのかを、ミードのオリジナルテクストの語用論的分析によって明らかにし、またどのように理解されるべきかもまた示した。同時に、テクストの日本語への翻訳そのものが無理解と通俗的発想とによってすでに変形されているかについても実例を示しながら明らかにした。
著者
三浦 文夫
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.185-201, 2021-09-30

順調に成長を続けてきたライブコンサート市場も2020年に全世界的なパンデミックを引き起こした新型コロナウィルスにより大打撃を受け、779億円(前年比21.3%)という惨憺たる結果になった。そこで、新たなサービスとしてオンライン配信ライブコンサートが注目され、さまざまなサービス形態で実施されている。そこで、具体的な事例を挙げ、音楽著作権、専属解放といった権利処理、配信技術などの課題を整理する。また、新たな音響体験を提供するイマーシブ(3D)オーディオについても触れ、その可能性について考察していく。
著者
雨宮 俊彦
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.89-141, 2000-09-25

本論文では,視覚記号の基本的な問題をあつかった。第1部では,視覚記号と聴覚記号の比較,音声言語と絵的記号の比較がなされた。そして,著者は,種々の視覚表示と視覚表現が,マー(1982)のとなえる視覚的情報処理における諸段階の表象と諸側面に関連して位置づけられることを指摘した。第II部では,グッドマン(1968)による記譜性にかんする記号論とデイーコン(1997)によるシンボリック・レファランスの成立についての説が,それぞれ批判的に検討された。最後に著者は,視覚記号における四種類のレファランス(外延指示、共示、例示、表現)のしくみの解明をこころみた。付録では,マンガ(日本のストーリーコミックス)表現が,音声言語表現と絵的表現の融合したものとして分析された。
著者
常木 暎生
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.59-85, 2008-12-20

This research proposes ansewrs to the following two questions: ①What do that brand advertisement express from the perspective of content analysis? ②Does a person who looks at brand advertisements have some kind of image, from the perspective of impression evaluation? Brand advertisement is not about the appeal of the goods themselves. Brand advertisement strengthens the brand image: its nobility, unfriendliness, elegance, beauty and privilege. The receiver of brand advertisements receives an impression which is similar to the image which the advertisements has expressed. The sender and the receiver of brand advertisements are sharing the same brand image.