著者
西川 一二 雨宮 俊彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.412-425, 2015 (Released:2016-01-28)
参考文献数
61
被引用文献数
6 15

本研究では, 知的好奇心の2タイプである拡散的好奇心と特殊的好奇心を測定する尺度の開発を行った。拡散的好奇心は新奇な情報を幅広く探し求めることを動機づけ, 特殊的好奇心はズレや矛盾などの認知的な不一致を解消するために特定の情報を探し求めることを動機づける。研究1では, 大学生816名を対象とした予備調査を行い, 50項目の項目プールから12項目を選定し, 知的好奇心尺度とした。次に大学生566名を対象とした本調査を行い, 予備調査で作成した知的好奇心尺度の因子構造の検討を行った。因子分析の結果, 各6項目からなる2つの因子が抽出され, 各因子の項目内容は, 拡散的好奇心および特殊的好奇心の特徴と一致することが確認された。2下位尺度の内的整合性は, 十分な値(α=.81)を示した。研究2では, 知的好奇心尺度の妥当性を, Big Five尺度, BIS/BAS尺度, 認知欲求尺度, 認知的完結欲求尺度と曖昧さへの態度尺度を用いて検討した。相関分析と回帰分析の結果, 拡散的好奇心と特殊的好奇心の共通性と対比について, 理論的予測とほぼ一致する結果が得られた。知的好奇心尺度の含意と今後の研究の展望について議論がなされた。
著者
雨宮 俊彦 水谷 聡秀
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.139-166, 2006-03-25

音感素は、音素と形態素の間のレベルに位置する、音象徴における基本単位である。英語やスウェーデン語などにおいては、二子音、あるいは三子音からなる多くの音感素の例が報告されている(Hinton, Nichols and Ohala, 1994; Abelin, 1999)。日本語は、二子音、三子音からなる音のパターンを欠いているので、そのような音感素も存在しない。Hamano(1998)は、日本語における各子音と各母音を音感素に設定し、日本語におけるオノマトペを組織的に分析している。Hamanoの分析は大変興味深いが、音感素と感性的意味の選択は分析者の直感によっている。この予備的研究で我々は、こうした基本問題に関する経験的な証拠を提供し、これを日本語における音象徴全般の問題に関連づけることを試みる。1)60のオノマトペが用いられた。オノマトペはすべてCIVIC2V2形式で、意味は感情に関連するものだった。12人の被験者がこれらのオノマトペを24の形容詞対により評定した。形容詞対24次元空間における60のオノマトペ間の距離行列がMDSにより分析された。2次元解が採用された。第1次元は明るさと、第2次元は硬さと最も高い相関を示した。2)157の日本語の拍が用いられた。99名の被験者がこれらの拍の明るさを、100名の被験者がこれらの拍の硬さを評定した。67の拍の評定平均値がカテゴリー回帰分析によって分析された。従属変数は明るさと硬さであった。独立変数は子音と母音だった。重相関係数は、明るさと硬さともにほぼ1であった。拍への影響は、明るさと硬さともに子音の方が大きかった。
著者
西川 一二 雨宮 俊彦 楠見 孝
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.93.21208, (Released:2022-08-30)
参考文献数
34

This study aimed to develop an Interpersonal Curiosity Scale. In Study 1, a questionnaire with a preliminary pool of 56 items was administered to undergraduates, and from these, 11items were selected. The main survey was administered to college students (n = 839) and as a web-based survey (n = 1,500). Factor analysis revealed three factors: curiosity about personal emotions, curiosity about privacy, and curiosity about personal attributes. Cronbachʼs alpha showed that these subscales had sufficient reliability. In Study 2, the validity of the Interpersonal Curiosity Scale was examined using the Five-Dimensional Curiosity Scale, the Sensation Seeking Scale, the Multidimensional Empathy Scale, and the Psychological Well-being Scale. The results of correlation analysis confirmed the validity of the three subscales. Implications about using the Interpersonal Curiosity Scale are further discussed.
著者
水谷 聡秀 雨宮 俊彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.102-110, 2015-06-30 (Released:2015-08-22)
参考文献数
18
被引用文献数
5 2

いじめ被害経験は心身状態に長期的な影響を及ぼす。従来の研究は, 子どもの頃のいじめ被害経験が後年における自尊感情や特性不安, 抑鬱, 孤独などに影響を与えることを示している。本研究では, いじめの発生状況をとらえ, 小学校と中学校, 高等学校のうちどの時期のいじめ被害経験が大学生のWell-beingに影響を与えるか, また自尊感情を媒介したWell-beingへの影響があるのかを検討する。そこで, 自尊感情, 主観的幸福感, 特性怒り, 特性不安, 各時期にいじめられた頻度について尋ねる質問紙を用いて大学生に調査を実施した。その結果, いじめ経験の頻度は高等学校よりも小中学校で高かった。パス解析により, 中学校や高等学校の頃のいじめ被害経験が大学生のWell-beingに影響を及ぼしていることを明らかにした。また, いじめ被害経験がWell-beingに直接的にも, 自尊感情を介して間接的にも影響を与えていることを見出した。これらの結果はいじめ被害経験が長期的に心的状態に影響を及ぼすことを支持するものである。
著者
西川 一二 奥上 紫緒里 雨宮 俊彦
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.167-169, 2015-11-20 (Released:2015-12-05)
参考文献数
10
被引用文献数
39

Grit is defined as perseverance and passion for long-term goals. In Western studies, grit was shown to be a character trait which contributes to future attainments and success. A Japanese translation of the Short Grit Scale (Grit-S: Duckworth & Quinn, 2009) was administered to 1,043 university students. The results of exploratory and confirmatory factor analyses demonstrated sufficient fitness and a two-factor structure which was basically the same as the original Grit-S. The two factors were named Perseverance and Consistency. Each sub-scale had sufficient internal consistency. Correlations with the Profile of Mood States (POMS), and measures of self-control and the Big Five personality factors attested to the basic validity of the Japanese Grit-S.
著者
西川 一二 雨宮 俊彦
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.412-425, 2015
被引用文献数
15

本研究では, 知的好奇心の2タイプである拡散的好奇心と特殊的好奇心を測定する尺度の開発を行った。拡散的好奇心は新奇な情報を幅広く探し求めることを動機づけ, 特殊的好奇心はズレや矛盾などの認知的な不一致を解消するために特定の情報を探し求めることを動機づける。研究1では, 大学生816名を対象とした予備調査を行い, 50項目の項目プールから12項目を選定し, 知的好奇心尺度とした。次に大学生566名を対象とした本調査を行い, 予備調査で作成した知的好奇心尺度の因子構造の検討を行った。因子分析の結果, 各6項目からなる2つの因子が抽出され, 各因子の項目内容は, 拡散的好奇心および特殊的好奇心の特徴と一致することが確認された。2下位尺度の内的整合性は, 十分な値(α=.81)を示した。研究2では, 知的好奇心尺度の妥当性を, Big Five尺度, BIS/BAS尺度, 認知欲求尺度, 認知的完結欲求尺度と曖昧さへの態度尺度を用いて検討した。相関分析と回帰分析の結果, 拡散的好奇心と特殊的好奇心の共通性と対比について, 理論的予測とほぼ一致する結果が得られた。知的好奇心尺度の含意と今後の研究の展望について議論がなされた。
著者
雨宮 俊彦
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.89-141, 2000-09-25

本論文では,視覚記号の基本的な問題をあつかった。第1部では,視覚記号と聴覚記号の比較,音声言語と絵的記号の比較がなされた。そして,著者は,種々の視覚表示と視覚表現が,マー(1982)のとなえる視覚的情報処理における諸段階の表象と諸側面に関連して位置づけられることを指摘した。第II部では,グッドマン(1968)による記譜性にかんする記号論とデイーコン(1997)によるシンボリック・レファランスの成立についての説が,それぞれ批判的に検討された。最後に著者は,視覚記号における四種類のレファランス(外延指示、共示、例示、表現)のしくみの解明をこころみた。付録では,マンガ(日本のストーリーコミックス)表現が,音声言語表現と絵的表現の融合したものとして分析された。
著者
竹内 洋 木村 洋二 雨宮 俊彦 吉岡 至
出版者
関西大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は、新聞の見出しに着目した荷重分析の理論的・方法論的検討を行い、以下の3つのテーマに関する報道を対象として取り上げて分析した。また、多重媒介コミュニケーションモデルの理論的精緻化を図り、ネツトワークにおける信頼と不信の荷重変換ダイナミックスについて検討を加えた。1.地下鉄サリン事件とオウム真理教問題:本分析では、見出しにおける「サリン」と「オウム」という語句の出現頻度と文字面積の大きさを計測し、得られた各値を通時的な荷重グラフに表示することから、朝日・産経・毎日・読売新聞の報道における各紙の視点の違いを明らかにした。さらに、この2つのキーワードの配置に応じて5段階の評点を与え、サリン事件とオウム真理教との意味的な結びつきの強さを定量的に分析した。2.戦後日本における「いじめ」報道:1945〜2007年までの朝日新聞データベースを用い、現在、教育問題として語られる「いじめ」が、戦後から現在に至るまでの報道によって誘導され形成された言説(=「世論」)であることを明らかにし、その時系列的変遷を考察した。「いじめ」と「教育」に関連する意味ネットワークを相互比較することによって、分析におけるキーワードの選定とその意義が示された。3.東アジア問題-東シナ海ガス田の開発:2004年の中国による東シナ海ガス田開発に関する報道をもとに、日中両国の国益に関わる問題について、「ガス」という語を手がかりとして荷重分析を行うことにより、暗黙のうちに示された「国益の優先」と「日中友好」という各紙の立場の違いを明らかにした。記事の見出しに特化した本分析法は、簡便化による分析の即応性が見出された。本研究によって、客観報道の神話に隠れた荷重バイアスを視覚・データ化し、社会的現実がメディアの重みづけ報道によって相互構築されていく過程を実証的に分析する新しい手法の有効性を検証することができた。
著者
雨宮 俊彦 光田 愛 宮原 朋子
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.167-200, 2008-03
被引用文献数
1

Williams (1976)は、英語における異種感覚モダリティー間の修飾表現の歴史的変化を分析し、触覚や味覚、嗅覚などの低次の感覚モダリティーの形容詞は、初めは同じ感覚モダリティーの名詞を修飾するが、後の時代になるとしばしば色や音などのような高次の感覚モダリティーの名詞を形容するようになることを示した。これは、異種感覚モダリティー間の修飾表現における方向性仮説とよばれる。Williamsの研究をうけて、日本語の用例のより詳しい調査や理解可能性の調査が行われた。全体として、方向性仮説は支持されている。しかし、高次、低次といった考えは粗いもので、研究者の間には用いるデータの種類や結果の解釈の食い違いが存在する。我々は、日本語における異種感覚モダリティー間修飾表現の方向性仮説の妥当性を、心理学的な理解可能性評定とグーグルを用いた検索による頻度調査により検討した。5つの名詞(色、音、匂い、味覚、触覚)と55の感覚形容詞からなる220の異種感覚モダリティー間の修飾表現が用いられた。全体として理解可能性と使用頻度は良い対応を示した(r=0.64, p<0.01)。データをより詳しく調べると次の二つの傾向が顕著だった。(1)触覚から他の感覚への一方向的な転移。(2)感覚のグループ化(味覚-嗅覚、視覚-触覚)。一方向性仮説との関連でこれらの二つの傾向の含意が議論された。
著者
奥上 紫緒里 西川 一二 雨宮 俊彦
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.29-41, 2012

本研究では,フロー体験チェックリスト(石村,2008)を使って大学生のフローの頻度を測定した。測定の結果,フロー体験の比較的ある群とない群の2群に分かれた。いずれの群においてもフロー体験頻度に男女差は見られなかった。また,研究1においてフロー体験に関し「没入」「自信」「挑戦」の3因子の確認ができ,石村(2008)が示した特性が確認できた。研究2においてフロー体験の頻度と性格や感情,Well-beingに関する他の尺度と関連することがわかった。
著者
西川 一二 雨宮 俊彦 楠見 孝
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.436-446, 2022 (Released:2022-12-25)
参考文献数
34

This study aimed to develop an Interpersonal Curiosity Scale. In Study 1, a questionnaire with a preliminary pool of 56 items was administered to undergraduates, and from these, 11items were selected. The main survey was administered to college students (n = 839) and as a web-based survey (n = 1,500). Factor analysis revealed three factors: curiosity about personal emotions, curiosity about privacy, and curiosity about personal attributes. Cronbachʼs alpha showed that these subscales had sufficient reliability. In Study 2, the validity of the Interpersonal Curiosity Scale was examined using the Five-Dimensional Curiosity Scale, the Sensation Seeking Scale, the Multidimensional Empathy Scale, and the Psychological Well-being Scale. The results of correlation analysis confirmed the validity of the three subscales. Implications about using the Interpersonal Curiosity Scale are further discussed.
著者
雨宮 俊彦
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2-3, pp.297-338, 2000-03-25

名づけの問題は,言語学,文化人類学,哲学,心理学など,おおくの分野の研究対象となってきたが,名づけをあつかう統合的や枠組みがないために,研究は断片的なものにとどまっている。本論文のシリーズでは,名づけの現象に認知科学的なみとうしを提供することをこころみる。今回は,言葉の意味について,ワードネットに具体化されているような古典的な見方と認知言語学的な見方を比較した。言葉の意味には, さまざまな側面がある。古典的な見方は,言葉の意味における,言葉と言葉の基本的な関係にかかわる静的で階層的な側面に焦点をあてるのにたいし,認知言語学の見方は,言葉と世界のインターフェースのよりダイナミックな側面に焦点をあてる。名づけは,おもに言葉の意味の,後者の側面と関連した現象であり,固定的で階層的な言葉の意味の体系のあちこちをつねに変化させていくちからである。
著者
雨宮 俊彦 生田 好重
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.123-165, 2008-03-30

リバーサル理論は、25年ほど前に研究が開始された動機づけ状態、あるいは、動機づけスタイルの理論である。従来の動機づけ理論は、親和か達成か、外在的か内在的かといった個々の動機づけやその特徴を個別に問題にしてきた。これに対し、リバーサル理論では、動機づけを個別、固定的ではなく、状況により変わるダイナミックなものとして、その全体像をシステマティックにとらえようとしている。具体的には、現在のリバーサル理論では、人間経験の四つの側面(手段-目的、ルール、処理、関係)について、テリック-パラテリック、順法-反抗、支配-共感、オーティック-アロイックの四対の動機づけ状態を設定し、状況により動機づけ状態の反転が生ずるとし、スポーツや芸術、教育、産業活動、娯楽、笑いなど幅広い人間活動を動機づけ状態とその反転の観点から研究している。本論文では、リバーサル理論の概要について、簡明な解説を行う。
著者
雨宮 俊彦 住山 晋一 増田 のぞみ
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.1-191, 2002-03-25

マンガは、複数のコマからなる折衷的、総合的な視覚表現のメデイアである。マンガでは、コマにさまざまな絵と言業がおさめられ、ページ内の並置的なコマ配置をつうじて物語りの時空が、視覚的に表現される。本論文では、こうしたマンガの表現の全体的な特徴を、心理学、メデイア論、記号論などの観点から分析をこころみる。第一部では、コマを構成する人物、背景、形喩、音喩、会話、叙述などの諸要索をレイヤーとして分解、抽出し、代表的な作品の表現の特徴を分析した。つづいて、分解した諸要素を複数の声部、コマを小節として、マンガの総譜表記をこころみた。第二部では、日本の少女マンガで複雑に発達した、コマ構成の歴史が概観され、最近多くみられるコマとコマの間に間白をつくらないコマ構成の意義の検討がおこなわれた。第三部では、構造記号論、夏目らのマンガ表現論、マクラウドのマンガ表現論などが批判的に検討され、マンガ表現論の枠組みとして、感性認知記号論の概要が提示された。
著者
雨宮 俊彦
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.89-141, 2000-09-25

本論文では,視覚記号の基本的な問題をあつかった。第1部では,視覚記号と聴覚記号の比較,音声言語と絵的記号の比較がなされた。そして,著者は,種々の視覚表示と視覚表現が,マー(1982)のとなえる視覚的情報処理における諸段階の表象と諸側面に関連して位置づけられることを指摘した。第II部では,グッドマン(1968)による記譜性にかんする記号論とデイーコン(1997)によるシンボリック・レファランスの成立についての説が,それぞれ批判的に検討された。最後に著者は,視覚記号における四種類のレファランス(外延指示、共示、例示、表現)のしくみの解明をこころみた。付録では,マンガ(日本のストーリーコミックス)表現が,音声言語表現と絵的表現の融合したものとして分析された。
著者
雨宮 俊彦
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.253-291, 2001-03-21

ソシオン理論の特徴は、みっつある。ひとつめは、エージェントとしてのソシオン間の荷重関係をプリミィテイブとすることである。ふたつめは、個人・社会のダイナミズムをとらえるために概念と記述法を、ツールとして提供しようとすることである。みっつめは、解明の目標とするのが、ローカルで個体的な過程とグローバルで集合的な過程の循環のダイナミズムと、個体内の主観的な荷重関係と個体外の客観的な荷重関係の間の内部化と外部化の循環のダイナミズムの二重の循環にあることである。本論文とつづく論文では、ソシオン理論を、エージェント・環境相互作用モデルとして定式化するための検討をおこなう。本論文では、エージェント・環境相互作用モデルの概観をおこない、荷重関係がエージェント・環境相互作用モデルでどのようにあつかわれるのか検討した。自律的エージェントの環境内での適応行動と学習、社会的感情が、荷重関係をもとに分析できることがしめされた。特集・ソシオン理論の冒険
著者
西川 一二 吉津 潤 雨宮 俊彦 高山 直子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.40-48, 2015-04-30 (Released:2017-12-28)
被引用文献数
1

本研究では,好奇心と精神的な健康との関連を明らかにするため,CEI-II(The Curiosity and Exploration Inventory-II)の日本語訳に基づく日本版好奇心探索尺度を作成し,精神的健康や心理的well-beingとの関連を検討した。調査対象者は大学生830名であった。因子分析の結果,日本版好奇心探索尺度では,CEI-IIとほぼ同じ「伸展型好奇心」(α=.82)と「包括型好奇心」(α=.78)が抽出された。伸展型好奇心は計画性や誠実性の高さと,包括型好奇心は状況を受容し自己を調整する能力の高さや社交性の高さと,関連しており,好奇心探索尺度で測定される2タイプの好奇心が,それぞれやや違った経路を通じて精神的健康と心理的well-beingに影響する事が示唆された。
著者
高山 直子 雨宮 俊彦 西川 一二 吉津 潤 有吉 浩美 洲崎 好香 中村 登志子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.87-94, 2012-07-31 (Released:2017-12-28)
参考文献数
13

本研究では成人勤労者および青年期学生における,肥満におよぼす心理的要因の影響を明らかにするために,日本語版Dutch Eating Behavior Questionnaire(以後,DEBQ)を用いて食行動を調査した。DEBQはVan Strien, Frijters, Bergers, Defares(1986)によって開発された食行動尺度で,情動的摂食,抑制的摂食,外発的摂食の3尺度で構成される。体格指数(BMI)を用い,BMIとDEBQ3尺度および性差との関連について検討した。調査対象は成人勤労者602人,平均年齢は32.9(SD7.48)歳青年期学生705人,平均年齢は174(SD1.56)歳であった。因子分析の結果,日本語版DEBQの下位尺度を構成する項目は,成人勤労者群においてオリジナルと完全に一致,青年期学生群においてはほぼ一致し,情動的摂食,抑制的摂食,外発的摂食の3尺度が確認された。DEBQ3尺度とBMIとの関連では,肥満の成人勤労者群は抑制的摂食,また,肥満の青年期学生群は抑制的摂食に加え,外発的摂食では尺度値が低いことを示した。成人勤労者群および青年期学生群のBMIとDEBQの性別比較では,BMIは男性の方が高く,外発的摂食,抑制的摂食,情動的摂食は女性の方が高かった。
著者
水谷 聡秀 雨宮 俊彦
出版者
The Japanese Association of Educational Psychology
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.102-110, 2015
被引用文献数
2

いじめ被害経験は心身状態に長期的な影響を及ぼす。従来の研究は, 子どもの頃のいじめ被害経験が後年における自尊感情や特性不安, 抑鬱, 孤独などに影響を与えることを示している。本研究では, いじめの発生状況をとらえ, 小学校と中学校, 高等学校のうちどの時期のいじめ被害経験が大学生のWell-beingに影響を与えるか, また自尊感情を媒介したWell-beingへの影響があるのかを検討する。そこで, 自尊感情, 主観的幸福感, 特性怒り, 特性不安, 各時期にいじめられた頻度について尋ねる質問紙を用いて大学生に調査を実施した。その結果, いじめ経験の頻度は高等学校よりも小中学校で高かった。パス解析により, 中学校や高等学校の頃のいじめ被害経験が大学生のWell-beingに影響を及ぼしていることを明らかにした。また, いじめ被害経験がWell-beingに直接的にも, 自尊感情を介して間接的にも影響を与えていることを見出した。これらの結果はいじめ被害経験が長期的に心的状態に影響を及ぼすことを支持するものである。