著者
住田 公明
出版者
国際ビジネス研究学会
雑誌
国際ビジネス研究学会年報 (ISSN:13480464)
巻号頁・発行日
no.11, pp.329-342, 2005-09-30

企業の事業活動がグローバルに拡大するにつれて、東西冷戦終結後の1990年代から安価な人件費のメリットを生かして中・東欧、中国等の企業も市場参入したことにより、価格を中心とした企業間競争が激化している。そのため、日本企業はグローバルマーケットで生き残りをかけ、懸命になって各事業を展開している。その事業を展開するにあたり、経営戦略を立案し、立案された戦略(主に事業戦略)を実行する必要がある。戦略の一つに成長戦略があり、その戦略を実行するツールとして、市場拡大を図るためのグローバルM&A戦略がある。海外企業のM&Aを過去に行なったか、現在も継続している日本企業は数多くあるが、成功例よりは、どちらかというと失敗例の方が多く見受けられるのが現実の姿である。大学卒業後入社した某社では、個人としては、海外ビジネスに従事し、ドイツの大財閥の一つであるS社等との海外企業とのビジネス交渉の経験を積んできた。会社としての海外ビジネスでは、資本参加から始まり最終的には子会社化したイギリス最大のコンピュータ会社であったI社(英国)、北米でIBM汎用大型コンピュータのPCM(Plug Compatible Machine)ビジネスをしていたA社(米国)等の赤字経営が続き、ビジネス縮小や会社の解散等を目の当たりにしてきた。また、現在在籍する企業でも、海外企業の買収が事業戦略から行われたのではなく、被買収会社から持ちかけられ、買収行為そのものが目的化したため、買収先会社の経営が芳しくない現実がある。海外企業とのM&A(グローバルM&A)の失敗例を身近に体験したことで、日本企業にはグローバルM&Aを成功させられない共通の要因があるのではないかとの考えに至った。その要因を分析・検討することが、企業人にとって今後のグローバルM&Aの失敗を避けられる一助となるものと期待するものである。