著者
溝田 智俊 佐々木 みなみ 山中 寿朗
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.115-130, 2007-11-01 (Released:2007-11-17)
参考文献数
25
被引用文献数
1 7

カワウ,アオサギおよびゴイサギの営巣地下にある2地域の土壌(福島県本宮および福岡県久留米)について,窒素動態を無機態窒素含量と安定同位体比の時系列変動を指標として解析した.顕著に高い無機態窒素含量(8 g/kg乾土)が孵化と雛の成長期に見出された.巣立ちと営巣地から見られなくなった後,無機態窒素含量は急速に低下した.土壌の硝化活性は,やや冷涼な本宮営巣区にくらべて温暖な久留米営巣区で高かった.硝化と連動した脱窒過程が繁殖期後期に顕著であることが特異的に高い硝酸態窒素の同位体比から推察された.カワウは繁殖およびねぐらとして1年を通じて森林を利用するために,土壌に連続的に糞窒素が搬入される.その結果,一時的に利用するサギ類に比較してカワウ営巣区ではアンモニア生成速度が高く維持されると推定された.