著者
佐々木 三公子 川端 康弘
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.27, 2018-01-01 (Released:2018-02-07)
参考文献数
15

本研究では,カテゴリ境界色を色典型性の高い物体または低い物体の画像に着色し,典型色の知識が色記憶の変化方向に与える影響を検証した.実験1の結果,同じ境界色を着色した場合でも,物体によって色相の変化方向が異なり,色典型性の高い物体条件では呈示されたそれぞれの物体の典型色方向に近づくことが分かった.また,実験2では実験1の結果が色カテゴリよりも典型色の影響を強く受けたことを示すために,実験1で用いた呈示色をカラーチップ画像にして色カテゴリ分類課題を行った.実験2で分類したカテゴリが,実験1で呈示した物体の典型色と異なった場合,記憶の変化方向がカテゴリのフォーカル色と典型色のどちらに近づいたか集計した結果,物体の典型色方向に変化した割合が有意に多かった.一方,色典型性の低い物体の場合にはフォーカル色方向に近づく割合が多かった.このことから,色典型性が高い場合,物体色の記憶は物体の典型色の影響を受けて典型色方向に変化することが示唆された.
著者
川端 美穂 川端 康弘 佐々木 三公子 高橋 文代 笠井 有利子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.163, 2020-07-01 (Released:2020-08-15)
参考文献数
53

100 hue testの総エラー値(TES)について,大学生280人を対象に制限時間が120秒と短縮条件の90秒の2群に分けて調査を行った.90秒条件において一般3色覚者の色識別力に大きな個人差が見られ,非常に良好な色識別力(TES=0)を有する人から異常3色覚に近い成績(TES=184)の人まで多岐にわたることがわかった.TESの分布は90秒条件の方がより典型的な正規分布を示し,120秒条件はTES=0で床効果がみられる.一般3色覚者では,3年以上芸術系のサークルや習い事などの経験を持つ,色識別との関わりが深い人のTESは,経験がない人や3年未満の人のTESを有意に下回っている.この傾向は120秒条件よりも90秒条件で顕著にみられる.この色識別力における個人差は日常生活における色に関する経験や学習の影響が大きいようであり,高次の視覚過程における高い可塑性が反映されていると考えられる.