著者
川端 康弘 山口 宗彦
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.821-833, 2020 (Released:2020-08-25)
参考文献数
30
被引用文献数
2 3

台風進路予報における予報楕円の有効性を、マルチセンターアンサンブル手法を用いて調査した。使用した台風進路予報データは、2016~2018年の気象庁、欧州中期予報センター、米国環境予測センター、英国気象局の数値予報センターの全球アンサンブル予報である。これら4センターの全球アンサンブル予報によるマルチセンターアンサンブルは、初期値ごとに異なる予報の不確実性を、台風の進行方向に沿った成分とそれに直交する成分において、より適切に表現できることがわかった。予報円は進路予報誤差が等方的な分布であることを仮定しているが、予報楕円を導入することにより台風の移動方向あるいは移動速度のどちらに予報の不確実性が大きいか把握することができる。予報円と予報楕円の面積を比較したところ、予報楕円の面積は平均して3日先予報で16%、4日先で15%、5日先で24%減少することがわかった。予報楕円は台風の警戒領域を絞り込むことができ、防災対応・緩和策をより強化できる可能性がある。
著者
川端 康弘 梶野 瑞王 財前 祐二 足立 光司 田中 泰宙 清野 直子
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.5-12, 2021 (Released:2021-02-28)
参考文献数
53

Visibility is important information not only for meteorological analysis but also for operations of transport and monitoring air pollution. In this study, climatological features of visibility in the Tokyo urban area are investigated. The number of days with low visibility decreases year by year. The factors can be drying in urban areas and the improvement of air quality, and the reduction of suspended particle matters contributes more to improve the visibility than the relative humidity. The visibility shows seasonal changes; during summer, visibility decreases when photochemical smog is likely to occur, whereas the visibility increases in winter. Visibility in Tokyo can be largely affected by anthropogenic hygroscopic aerosols, which decrease visibility when relative humidity is high.
著者
佐々木 三公子 川端 康弘
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.27, 2018-01-01 (Released:2018-02-07)
参考文献数
15

本研究では,カテゴリ境界色を色典型性の高い物体または低い物体の画像に着色し,典型色の知識が色記憶の変化方向に与える影響を検証した.実験1の結果,同じ境界色を着色した場合でも,物体によって色相の変化方向が異なり,色典型性の高い物体条件では呈示されたそれぞれの物体の典型色方向に近づくことが分かった.また,実験2では実験1の結果が色カテゴリよりも典型色の影響を強く受けたことを示すために,実験1で用いた呈示色をカラーチップ画像にして色カテゴリ分類課題を行った.実験2で分類したカテゴリが,実験1で呈示した物体の典型色と異なった場合,記憶の変化方向がカテゴリのフォーカル色と典型色のどちらに近づいたか集計した結果,物体の典型色方向に変化した割合が有意に多かった.一方,色典型性の低い物体の場合にはフォーカル色方向に近づく割合が多かった.このことから,色典型性が高い場合,物体色の記憶は物体の典型色の影響を受けて典型色方向に変化することが示唆された.
著者
金 聖愛 川端 康弘
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.143-153, 2017-07-01 (Released:2017-07-20)
参考文献数
31

本研究は北海道在住の20代から30代前半の学生に対して,単色及び左右並びの2色配色に対する好ましさの評価を行い,現代の若者の色の嗜好性について検討するとともに,評価にかかる反応時間および視線の動きをあわせて測定した.色の好ましさの評価については,配色の構成色間の距離に関わらず,ライトトーン(高輝度,低彩度)の配色構成がビビットトーン(低輝度,高彩度)やダークトーン(低輝度,低彩度)より好まれ,赤-緑系より青-黄系の方に人気があった.さらに,使用した2色が同じであっても,左から右へ暖色から寒色を並べた2色配色は,寒色から暖色を並べた2色配色より好まれた.また反応時間については,単色及び配色の好ましさの評価が高いほど短く,全般的に配色よりも単色の方が長かった.視線の動きに関しては左から右の順が暖色から寒色の場合,配色構成の距離に関わらずどの2色配色でも左より右の色に視線を多く向け,注視時間も長かった.
著者
川端 美穂 川端 康弘 佐々木 三公子 高橋 文代 笠井 有利子
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.163, 2020-07-01 (Released:2020-08-15)
参考文献数
53

100 hue testの総エラー値(TES)について,大学生280人を対象に制限時間が120秒と短縮条件の90秒の2群に分けて調査を行った.90秒条件において一般3色覚者の色識別力に大きな個人差が見られ,非常に良好な色識別力(TES=0)を有する人から異常3色覚に近い成績(TES=184)の人まで多岐にわたることがわかった.TESの分布は90秒条件の方がより典型的な正規分布を示し,120秒条件はTES=0で床効果がみられる.一般3色覚者では,3年以上芸術系のサークルや習い事などの経験を持つ,色識別との関わりが深い人のTESは,経験がない人や3年未満の人のTESを有意に下回っている.この傾向は120秒条件よりも90秒条件で顕著にみられる.この色識別力における個人差は日常生活における色に関する経験や学習の影響が大きいようであり,高次の視覚過程における高い可塑性が反映されていると考えられる.
著者
川端 康弘 川端 美穂 笠井 有利子
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.522-528, 2011-12-10 (Released:2011-12-13)
参考文献数
32
被引用文献数
2

シーンの再認,シーンのgist (本質的情報),物体やシーンの変化発見や変化見落としといった高次視覚で扱われる現象の認知モデルにおいては,伝統的に無彩色の輝度情報の役割が強調され,色情報の貢献はあまり考慮されてこなかった.しかし最近,行動学的研究,ニューロイメージング研究,心理学的研究といった認知科学の諸分野で,対象物の表面色やシーン全体の配色が,認知に影響を及ぼすことが示されている.この論文では,どのような条件下で色が高次視覚の働きに影響するかを扱った研究を紹介して,この働きを媒介するであろう神経基盤についても言及する.また色の知覚や再認において見られる個人差は,高次視覚の可塑性の高さに起因するのかもしれない.色と認知の関係性は,高次視覚のモデルの中でもう少し焦点をあてて扱うべきだろう.
著者
金 聖愛 川端 康弘
出版者
一般社団法人 日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.143-153, 2017

<p>本研究は北海道在住の20代から30代前半の学生に対して,単色及び左右並びの2色配色に対する好ましさの評価を行い,現代の若者の色の嗜好性について検討するとともに,評価にかかる反応時間および視線の動きをあわせて測定した.色の好ましさの評価については,配色の構成色間の距離に関わらず,ライトトーン(高輝度,低彩度)の配色構成がビビットトーン(低輝度,高彩度)やダークトーン(低輝度,低彩度)より好まれ,赤-緑系より青-黄系の方に人気があった.さらに,使用した2色が同じであっても,左から右へ暖色から寒色を並べた2色配色は,寒色から暖色を並べた2色配色より好まれた.また反応時間については,単色及び配色の好ましさの評価が高いほど短く,全般的に配色よりも単色の方が長かった.視線の動きに関しては左から右の順が暖色から寒色の場合,配色構成の距離に関わらずどの2色配色でも左より右の色に視線を多く向け,注視時間も長かった.</p>