- 著者
-
佐々木 光俊
- 雑誌
- 千葉経済論叢 = The Chiba-Keizai ronso (ISSN:0915972X)
- 巻号頁・発行日
- no.45, pp.29-64,
古代メソポタミアの代表的な物語の一つである「エタナ物語」を採り上げ、その背後にある<ワシの力>という観念の重要性に注目した。そして、この観念がシュメール文化の最初期から確認され、変容・変化を遂げながら新アッシリア時代の物語にまで引き継がれていることを、この物語の再読と他の物語との連関を探ることによって明らかにすることを試みた。この観念がもつ主権性との近縁性のために生じる他の諸神との競合として「アンズー物語」をとらえる。またニヌルタ神をワシの力や樹のイメージという「エタナ物語」の表象を通して、この神格の特性を捉えかえす。最後にもう一つの代表的な物語である「ギルガメシュ叙事詩」とこの物語にみられる共通性とその意味について検討した。