著者
岩瀬 康子 佐々木 利佳 堀川 英世 釈永 清志 山崎 光章
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.214-217, 2012

  グルカゴノーマ摘出後に高度の低血糖が原因の覚醒遅延をきたした症例を経験したので報告する.46歳女性.上腹部腫瘤と耐糖能障害を認めたため,確定診断の目的も兼ねて腫瘍摘出術が施行された.術中経過は安定しており,血糖値は103~110mg/dlであった.術後に覚醒遅延を認めたため血糖値を測定したところ,4mg/dlであった.ただちにブドウ糖を投与し,血糖値が回復すると速やかに覚醒した.術後に神経学的異常所見は認めなかった.グルカゴノーマの周術期には血糖値が大きく変動する可能性があるため,頻回に血糖値を測定する必要がある.グルカゴノーマ摘出後に覚醒遅延をきたした場合は低血糖の可能性を考慮する必要がある.