著者
長澤 実佳
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.662-668, 2019-11-15 (Released:2019-12-17)
参考文献数
15
被引用文献数
1

微小血管手術を予定された54歳の女性イスラム教徒患者の周術期管理を経験した.イスラム教の宗教上の理由から,麻酔管理では生物由来製品(ブタ),アルコールは使用できないなど使用薬剤に制限があり,患者に確認を行う必要があった.イスラム教徒の周術期管理には,麻酔管理以外にも通訳の問題,ハラール食の提供,未婚の女性では男性医師の診察に制限がある,生活習慣の違いを理解する,などの配慮が必要となることがある.当院で経験した症例から学んだ,イスラム教の概要と,使用に制限のある生物由来製品を提示し,イスラム教徒患者の周術期管理における注意点を考察する.
著者
鈴木 利保
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.92-107, 2006 (Released:2006-01-24)
参考文献数
30

日常臨床で麻酔科医が頻繁に使用する種々の針について, その歴史, 構造, 使いやすさについて解説し, 理想的な針について考察した. 多くの針はメーカーが設計・製造を行い, 使用者である医師の主観的評価のみがあり, その特性が客観的に評価されていない. これらの針を用いた手技は, 生体にとって侵襲的であり, ときに多様な合併症を引き起こし, 死に至る例の報告もある. われわれ医師は, 用いる針の特性を十分に理解し, 合併症を起こしにくい器材を世に出す必要がある. その際には, 使いやすさをわれわれ自身が客観的に評価する必要がある. こうすることにより, 患者と医療従事者の安全が守られると考える.
著者
青柳 卓雄
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-11, 1990-01-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
5
被引用文献数
2 6
著者
垣花 泰之 松田 兼一 西村 匡司 日本集中治療医学会専門医制度・審査委員会
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.679-683, 2019-11-15 (Released:2019-12-17)
参考文献数
2
被引用文献数
1

新専門医制度による基本領域専攻医の専門研修が2018年4月に日本専門医機構の下で開始となった.日本集中治療医学会は,麻酔科と救急科の2つの基本領域のサブスペシャルティであり,2021年の開始に向けて準備を進めている.新しい専門医制度では集中治療専門医は麻酔科,救急科のサブスペシャルティとなっているが,決してこれだけの診療科に限定されるべきではなく,今後,他の専門医のサブスペシャルティにもなるべく関連学会や日本専門医機構の理解を求めていく必要がある.
著者
宜野座 到 渕上 竜也 照屋 孝二 垣花 学 須加原 一博
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.465-470, 2010 (Released:2010-09-15)
参考文献数
13

患者は32歳の女性.アフリカから帰国後,発熱・嘔吐・下痢を発症した.輸入感染症を疑い,血液塗沫検査で赤血球内に2つのクロマチン顆粒をもつ輪状体が複数存在し,熱帯熱マラリアと診断した.赤血球感染率7%で重症マラリアとも診断した.集中治療室で,全身管理およびキニーネ静注による治療を行った.播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)も合併し,血小板輸血とアンチトロンビン製剤投与を行った.その後,マラリア感染およびDICは改善した.抗マラリア薬の適正な使用と,DICに対する早期治療が奏効したと考えられた.
著者
大山 由香 福山 由美
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.404-410, 2013 (Released:2013-07-13)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

良好な母子関係を築くためには,妊産婦にとって満足のいく出産体験が重要である.妊産婦にとって満足のいく無痛分娩を行うには,(1)妊産婦に対する母性の醸成を図るための教育,(2)助産師やその他のスタッフに対する硬膜外麻酔などの鎮痛処置の教育,(3)妊産婦・家族に対する無痛分娩の教育,(4)設備等の安全体制の強化,(5)分娩中,分娩後の精神的なケアが必要である.
著者
野村 岳志
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.613-621, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1

緊急時の外科的気道確保としての輪状甲状膜穿刺・切開は種々の気道管理ガイドラインの最後の手段の一つである.手技自体は喀痰吸引などを目的に計画的に行う輪状甲状膜切開と同じであるが,施行する環境は大きく異なる.SpO2モニターが低音調で頻脈,不整脈,あるいは徐脈を告げ,アラーム音が鳴り響く中での手技である.時間的余裕はなく,数分で心停止となる.このような状況下での緊急輪状甲状膜切開はやはり手技自体の成功率が下がる.そのため換気不可能となった場合は人員を集め,生理学的状態を考えながら換気不可能に対処するタスクチームを編成する必要がある.確実な輪状甲状膜切開と同様に,二人法のマスク換気,薬剤の投与,除細動器・救急カートの準備,確実な記録記載などを行うことも重要で,タスクチームとしての対処が患者の生命予後を左右する.
著者
飯田 宏樹
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.709-718, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
34

麻酔科医は喫煙患者では周術期管理に苦慮することを経験してきた.喫煙は呼吸・循環機能を含め全身に影響を与えることは広く知られているが,周術期禁煙の意義は十分には理解されていない.周術期においては,喫煙者は非喫煙者に比べ,死亡,肺炎,予期せぬ気管挿管,人工呼吸,心停止,心筋梗塞,脳卒中等の死亡率・術後合併症のリスクが高くなることが示されている.最近では術前の禁煙期間が1週間長くなると,術後合併症が19%減少することが報告されているので,できるだけ早く術前禁煙を達成させることが大切である.ここでは周術期禁煙の意義を示すとともに,手術直前まで喫煙している患者に対する麻酔管理をいかに行うべきかも含めて提示する.
著者
中根 正樹
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.932-938, 2013 (Released:2013-12-14)
参考文献数
21

Open lung approachは肺傷害によって虚脱した肺胞を再開放させ(Open up the lung),再虚脱しないように気道内圧を保つ(Keep the lung open)ことで,肺コンプライアンスが高い状態を維持しながら肺へのストレスが少ない陽圧換気を行う人工呼吸法の概念である.本概念に含まれる呼吸管理には,低容量換気とプラトー圧の制限に加えて,リクルートメント手技の併用,より高いPEEP,腹臥位療法,気道内圧開放換気(APRV)や高頻度振動換気(HFOV)といった特殊な換気法などがあげられる.新しいARDSの定義であるベルリン定義を考慮しながら,これらのOpen lung approachを解説する.
著者
中江 文
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.259-265, 2008 (Released:2008-04-16)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

麻酔科医として勤務しながら3度の帝王切開を経験し, その実体験と, 女性麻酔科医の可能性について考察した. 私の仕事に対する考え方は, 実際に手術を体験し, 子育てにかかわるようになってから変化した. 実体験と想像の間にはかけ離れた世界があることを知り, 他の手術を担当する際も患者の様子を注意深く観察し, 訴えに謙虚に耳を傾け, できるだけ不快感を取り除くことが重要だと考えるようになった. 若手の先生に対する指導の仕方も変わった. 女性は上記のような体験, 子育てにかかわる可能性が高く, それらの経験がよい麻酔管理につながり, 女性麻酔科医の利点と考えられる. 私自身もそのことを念頭にさまざまな恩に報いたい.
著者
松崎 孝 森松 博史
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.219-224, 2017-03-15 (Released:2017-04-21)
参考文献数
26

●周術期の輸液管理は重要で,脱水と輸液過剰は術後合併症の点で有害である.●侵襲の伴う開腹手術における長時間の絶食はエビデンスが乏しい.●術中の維持輸液は術前の体重を維持する目的(ゼロバランスの維持)で施行すべきである.●周術期に1回拍出量を指標にした目標指向型の輸液管理は,合併症を有するハイリスクの患者群 で術後合併症や病院滞在日数を軽減させる可能性があるが,前向き研究では否定的である.●可能ならできるだけ術後早期に点滴は中止して,経口摂取を再開するべきである.●問題がなければ周術期の乏尿は経過観察すべきである.
著者
本多 夏生
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.187-196, 1995-04-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
24

It is well-known fact that progressive hyperthermia exerts fatal damage on living body. But the lethal mechanism is not fully understood. So physiological studies were performed in animals with whole body hyperthermia by surface warming.During hyperthermia, various parameters were serially measured including body temperature, aortic pressure, heart rate, blood gases, tissue blood flow, brain wave, hormonal responses and others. And, a number of pathophysiological changes were observed, including hyperthermia, hypermetabolic state, tachycardia, hypoxia, hyperkalemia, lacticidemia, acidosis, coagulopathy, endotoxins and others. From these results, it is considered that various factors are involved in the aetiology of whole body hyperthermia. but the elevated body temperature, metabolic acidosis, hypotension and hypoxia are the important factors which determine the fatal outcome.

10 0 0 0 OA 麻酔の歴史

著者
松木 明知
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.427-433, 1990-09-15 (Released:2008-12-11)
参考文献数
7
著者
土肥 修司
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.001-014, 2015 (Released:2015-02-17)
参考文献数
40

エーテル麻酔の成功から約170年,著者の経験は後半の一時にすぎないが,この40年間に,麻酔の理解も安全性も飛躍的に向上した.麻酔薬による意識,記憶,疼痛,運動機能への抑制効果は一様ではなく,おのおの薬の薬理特性によって異なる.麻酔の主要な構成要素である「無意識と無記憶」状態は,麻酔薬が視床を中心とした脳神経系ネットワークの統合を抑制して,環境との連絡が断たれたときに生じると理解されている.麻酔状態では自然睡眠中と異なり,記憶形成過程の増強はないが,「無意識なのか」「記憶の形成中なのか」を確実に検出できるモニターはない.本論文では,研究の歴史的流れを通して麻酔中の意識と記憶に関しての簡潔な総説を試みた.
著者
谷口 英喜
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.245-253, 2022-05-15 (Released:2022-07-13)
参考文献数
18

超高齢化社会に突入したわが国では,治療技術の向上により,高齢患者への手術適応が以前にも増して拡大した.高齢患者では,呼吸循環器系の合併症に加え,認知機能の低下やサルコペニアおよびフレイルなどが,周術期に問題視される.ERAS protocolでは,高齢者に対する術前環境適正化策の一つとして,プレハビリテーションが推奨されるようになった.プレハビリテーションでは,運動療法,心理的サポートおよび栄養サポートの3つの介入をする.標準的なケアと比較してプレハビリテーションにより術後疼痛,在院日数および身体機能が改善することが示されている.一方,わが国では,術前準備期間の不足や保険制度上の支援がないことから普及がいまだ進んでいない.
著者
原 正彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.106-110, 2022-01-15 (Released:2022-03-03)
参考文献数
12

近年,高齢化に伴う医療需要の増加に,医療を支える若い世代の人口減少も相まって医療従事者の負担が激増しており,デジタル技術による医療の効率化が喫緊の課題となっている.われわれは治療効率向上の観点から大阪大学における産学連携活動を通して仮想現実(virtual reality:VR)技術を応用したリハビリテーション用医療機器「mediVRカグラ」を開発した.本機器は運動失調や,歩行・上肢・認知機能障害,および疼痛の治療に応用が進んでおり,業務の効率化に加えて,その高い治療効果に期待が集まっている.本稿ではゲーム分野におけるさまざまな知見が,医療機器にどう応用され臨床効果につながっているのかについて概説したい.
著者
甲斐 哲也
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.369-379, 2017-05-15 (Released:2017-06-17)
参考文献数
10
被引用文献数
1

麻酔科医にとって手術室の管理は仕事の一部であり,麻酔科医は手術室の環境整備に関する知識を備えておく必要がある.CDCの手術部位感染防止ガイドライン1999は,当時のエビデンスに基づいた勧告であり,十数年経った今もわれわれ手術に関わる者の拠り所である.本ガイドラインを基にしながら,手術室の空調と清掃・滅菌など手術室環境の整備に関して,現在の日本のガイドラインを交えて概説する.
著者
杉本 浩士 松成 泰典 川西 秀明 萱島 道徳 川口 昌彦 古家 仁
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.531-537, 2014 (Released:2014-09-06)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1

日本麻酔科学会による周術期管理チーム養成の提唱等により,病院長の方針のもと,麻酔アシスタントとして麻酔補助業務を担当する臨床工学技士が誕生し,平成26年3月現在,6名が当院の研修プログラムを修了した.その業務内容は,術前準備を含めた麻酔補助・機器管理の大きく2つに分けられ,詳細は多岐にわたる.麻酔科医の業務軽減と医療安全の向上を目的として当制度が発足して現在約4年が経過した.麻酔補助においては業務の拡大と教育体制の充実が今後の課題であり,機器管理においてはますます業務が増える傾向にある.われわれ麻酔アシスタントと当院麻酔科医が共同で業務を行うことにより,医療安全の向上につながる可能性があると考える.
著者
髙橋 伸二
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.603-607, 2019-09-15 (Released:2019-10-29)
参考文献数
22

プロポフォールは全身麻酔や集中治療に広く使用されている注目すべき麻酔薬である.プロポフォール注入症候群(propofol infusion syndrome:PRIS)は高用量プロポフォール注入に関連するまれな合併症であるが,それは致命的となる.さらに,PRISのメカニズムはまだ不明であり,効果的な治療法はない.PRISは通常,長期間にわたって大量のプロポフォールを投与した場合に発生するが,最近の症例報告では,低用量のプロポフォール注入による発生も報告されている.われわれは,PRISに関する知識を増やす必要がある.