著者
佐々木 多津子 日景 弥生
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第47回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.39, 2004 (Released:2005-02-01)

【目的】家庭科で高校生にジェンダーに気づく授業を実践するときに、高校生のジェンダー観を数値としてつかむことが必要であると考える。高校生のジェンダー観に関する調査はいくつかあるが、それらは高校生の意識を中心とした調査(例えば、「~だと思いますか。」)であり、行動を含む実態調査の報告はあまりない。そこで、ジェンダーに気づく授業を実践するにあたり、高校生のジェンダー観を把握することを目的とした。【方法 】(1)調査対象者及び方法2002年5月下旬~6月上旬に、青森県内の高等学校3校(合計384名;内訳は男子158名、女子226名)で実施した。質問紙法により各学校の家庭科の授業時間に実施したため回収率は100%だったが、データ分析の関係から回答中に「無回答」があった生徒は調査対象から外し、有効回答率は94.1%であった。(2)調査項目アンケート項目は(財)東京女性財団が作成した「ジェンダーチェック学校生活編」「ジェンダーチェック家族・家庭生活編」を参考にし「意識」・「行動」・「感情」に分けて各12項目作成した。(3)集計方法各項目においてジェンダーフリーまたはジェンダーセンシティブと回答した者の割合をジェンダーフリー度(以下フリー度とする)とし、それらの選択肢に対して1点の得点を与え、それ以外は0点とした。このようにして得られた合計点は高い方がジェンダーフリーを示すようにした。【結果および考察】(1)高校生のジェンダーフリー度検定の結果、学校間の有意差はみられなかった。男女別にみると、3校とも女子の方が男子よりも点数が高くフリーとなり、この結果は他の調査とも一致した。各カテゴリー(「意識」「行動」「感情」)におけるフリー度の平均から、「意識」(71.0%)>「行動」(38.0%)>「感情」(31.9%)の順となった。このことから、高校生は「意識」は全般に高いが、「行動」や「感情」ではあまり高くないことが明らかとなった。(2)高校生の実態調査各項目ごとの男女の有意差を検定により調べた結果、36項目のうち16項目で有意差がみられ、男女の有意差についても「意識」より「行動」「感情」で多くみられた。これらの結果より、女子は「男は仕事、女は家庭」という性別役割を多くの面で否定しつつも「仕事を持つ」という意識が低く、結婚したら仕事を辞め、養ってもらいたいと思っている実態も明らかとなった。(3)実態調査から考えるジェンダー学習以上のことから、ジェンダー学習に必要な授業について、次の2つのことが得られた。1つ目は高校生は「意識」ではフリーであることから自分に置き換え、フィードバックして気づくことのできる授業が必要である。2つ目は、内容として「働くことは両性に必要である」「生活的自立も両性に必要である」ことを実感できることが必要である。