著者
佐々木 太一 木村 富士男
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.65-74, 2001-02-28
被引用文献数
18

1996, 97年の夏期の静穏日7日間について, 関東平野及び周囲の山岳域における可降水量の日変動を調べた.国土地理院により全国約1000地点において観測され, 3時間間隔で算出されているGPS大気遅延量から可降水量を求め, 他の気象データとともに解析した.日中には, 大規模な谷風及び太平洋あるいは日本海側からの海風と思われる地上風の収束が関東北部や西部の山岳域に見られる.この領域では可降水量が午後に大きく増加し18時頃に最大となる.一方, 関東平野の内陸部ではそれより遅れて24時頃に最大となる.可降水量の増大に対応して降水頻度が増加する傾向が見られる.これとは対照的に, 関東平野の沿岸部における可降水量の日変動の振幅は小さく, 特に海風の吹き込む時間帯にはほとんど増加していない.大島や石廊崎における可降水量や地上比湿が海上の水蒸気量を代表すると想定し本土と比較した結果, 海上は陸上に比べ大気下層は湿潤であるものの可降水量は小さいことがわかる.沿岸部において日中に可降水量が増加しない理由は, 海上大気の可降水量が小さいことと, この領域が局地循環による発散域に位置するためであると推測される.