著者
佐々木 宰
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学:美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.203-215, 2019 (Released:2020-04-28)
参考文献数
17

多民族・多文化社会における美術教育の特徴的な機能として,「エスニシティの可視化」 と,それを通した「自国の美術文化の創出」というモデルを想定した。アジアの多くの国は多 民族・多文化国家であり,特に東南アジア諸国においては,それぞれの民族集団におけるエス ニシティと,国民としてのナショナリティの二重の帰属意識が求められる。複数のエスニシテ ィをどのようなバランスで扱うかは国の政策によって異なるが,インドネシア,マレーシア, シンガポールでは学校教育を通して民族の文化的な価値観を育成しており,そのために視覚や 触覚を通して感性に働きかける美術教育が一定の機能を果たしていることが確認できた。さら に,エスニシティはもとより国民としての文化的価値観を共有するために,「自国の美術」の 創出が試みられており,その意識形成に対しても,美術教育が機能していることが確認された。