著者
田中 茂喜 佐々木 崇文 石黒 奈央 浦野 孝太郎 小山 秀一 木村 勇介 町田 登
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.162-166, 2019-03-20 (Released:2019-04-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

爪床悪性黒色腫の心臓転移がみられた犬の完全房室ブロック(CAVB)症例について,ブロック発生の形態学的基盤を明らかにすべく,心臓刺激伝導系を中心に詳細な病理学的検索を施した.本例は,死亡する11カ月前に右前肢の第5指に発生した悪性黒色腫の外科的切除術を受けていた.剖検時,心臓の割面では暗褐色〜黒褐色の腫瘍組織が,心筋層内に多発性の増殖病巣を形成していた.病巣部の組織学的検索により,悪性黒色腫の心臓転移と診断された.腫瘍性のメラノサイトは房室接合部領域にも重度に浸潤しており,房室結節は完全に消失していた.この病的機転はヒス束貫通部をも巻き込んでおり,当該部位の伝導系細胞は全長にわたって消失していた.このような房室伝導系病変が,インパルスの房室伝導を遮断したものとみなされた.
著者
佐々木 崇文 中尾 周 木村 勇介 平川 篤 町田 登
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.315-320, 2020-06-20 (Released:2020-07-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1

第3度房室ブロックを示した猫22例の心臓について,詳細な病理学的検索を実施した.これら22例の基礎心疾患は,肥大型心筋症10例,拘束型心筋症(心内膜心筋型)3例,不整脈源性右室心筋症2例,陳旧性心筋梗塞1例であり,残り6例の心臓に明らかな病的変化は認められなかった.房室接合部の組織学的検索では,基礎心疾患の有無やその種類に関係なく,全例の中心線維体基部と心室中隔頂上部に重度の線維増生(心臓骨格左側硬化)が認められた.こうした病的変化は同領域を走行する房室伝導系を巻き込み,伝導系細胞の脱落を引き起こしていた.なお,房室伝導系の重度傷害はヒス束分岐部から左脚上部に主座しており,高齢者にみられる特発性ブロックの原因であるLev病に類似していた.
著者
佐々木 崇文 平川 篤 福島 隆治 町田 登
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.617-621, 2019-10-20 (Released:2019-11-20)
参考文献数
14

第3度房室ブロック罹患犬36例のうち,死後の病理学的検索により房室伝導系に重度の器質的障害が見いだされた31例について,重度傷害部位と心電図上でのQRS幅及び心室レートとの関連性を検討した.QRS幅に関しては,正常なQRS群(narrow QRS)が4例,幅広いQRS群(wide QRS)が27例であり,重度傷害部位から想定される下位自動中枢(想定下位中枢)とQRS幅とが合致していたのは31例中26例(84%)であった.一方,心室レートは40/分未満が15例,40~60/分が7例,60/分以上が9例であり,想定下位中枢と心室レートが合致していたのは31例中13例(42%)であった.本検索結果から,QRS幅の方が心室レートよりも房室伝導系の重度傷害部位をより的確に映し出しているものとみなされた.