著者
星山 幸男 佐々木 康明
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.201-216, 2013-03-22

社会教育施設における指定管理委託の問題は、すでに多くの検討がなされているが、東日本大震災の被害を受けたところでは、この制度の本質にかかわる新たな問題が浮かび上がっている。そこで、宮城県南三陸町の総合スポーツ施設ベイサイドアリーナの事例を分析し、社会教育の課題に迫った。 事例では、施設が指定管理体制に移行された経緯と委託業務内容、震災発生時の状況と対応、その後の経過とスタッフの対応、指定管理者である企業から派遣された職員が直面した現実、そこで浮き彫りになった問題点について具体的にみていった。そこから、自治体と企業の板挟みとなり、それでも不眠不休の対応を進めた職員の姿が明らかとなった。 指定管理委託された社会教育施設では、公的施設であるがゆえに、自治体と指定管理者との二つの指揮系統下におかれる職員の性格のあいまいさが問題であり、専門的職員としての捉え直しの必要性が課題であることが明確になった。さらに、施設の管理運営の連続性・継続性と行政・指定管理者間の連携の問題、職員の専門性確保と研修の問題が課題であることを明らかにした。