著者
佐々木 悠介
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

前年度に引き続き、写真言説の中でとりわけ重要と思われる、カルティエ=ブレッソン受容文脈の変遷について、研究・調査を行った。昨年度、新型インフルエンザ流行と、海外での資料開示状況が思わしくなかったために見合わせていた出張を積極的に行った。まず六月にニューヨーク近代美術館のアーカイヴへの出張を行った。これはアメリカにおけるカルティエ=ブレッソン受容の状況を掘りこす意味で重要な調査であり、一部、公開審査を停止している資料があったものの、二十世紀後半の状況について、調査を行うことできた。また、八月には国際比較文学会(ICLA)の大会(於韓国ソウル、中央大学校)に参加し、研究発表を行った。これは、前述ニューヨーク出張の成果を踏まえたものである。またこの研究発表に関連して、国際比較文学会のProceedings(研究発表記録集)も英文原稿を投稿し(本年一月)、掲載可否の査読を待っているところである。なお、本研究に関連して博士論文の執筆中であるため、これ以外の途中段階の研究報告は行わなかった。本研究の二年間の採用年度の間に、次々と新しい題材が見つかり、研究対象の範囲を拡げてきたが、写真関連の一次資料(写真集ど)および二次資料(研究文献)は、国内の所蔵が極めて少なく、基本的な文献でも国内の図書館に全く所蔵されていない物も少ななかった。また、これらについて海外の図書館から複写取り寄せを試みたが、いずれも新しい時代の題材であるために,複写許可がりない物がほとんどであった。したがって、必要最低限のものは独自に購入せざるを得ず、本年度も昨年度に引き続き、洋文献購入特別研究員奨励費の多くを使った。その結果、本研究に関わる題材の、海外における研究状況の概略が明らかになったほか、従来の真研究の通説とは違った構図も徐々に発掘でき、現在執筆中の博士論文にも大きな前進が見られた。