- 著者
-
佐々木 成人
岡 美恵子
- 出版者
- (財)東京都医学研究機構
- 雑誌
- 特定領域研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 1999
ネコをパネルに向かって立たせ、パネル中央に投射した光点を注視させた状態から、光点を視野周辺に向かってスッテプ状、ramp-hold状に移動させ追跡させた。移動刺激に対して、ネコはまず頭を60ー150msの潜時でゆっくり動かし、この時眼球はVORで逆方向に動き、視線は空間内で固定される。次にサッケドとそれに続く速い頭の運動が起り、視線はターゲットを捕らえる。移動刺激からスッテプ刺激に変えると指向運動の潜時の著明な延長と頭の運動速度の低下が起ることから、ステップと移動刺激により誘発される指向運動は異なることが分かり、前者を位置誘導型志向運動、後者を速度誘導型指向運動と呼ぶことにした。更に速度誘導型指向運動は光点の移動速度からその到達位置を予測して、光点が移動中に動き始め、視線と光点がほぼ同時にターゲットに到達する予測指向運動と、光点の速度と位置情報の両者を手がかりにして光点がターゲットに到達してから指向する速度・位置誘導型指向運動に別れた。両者は以下の点でも異なった。頭の速度の刺激速度依存性は予測指向運動では見られたが、速度・位置誘導型ではほとんどなかった。光点を移動中に短時間消すと、後者ではではターゲットに正確に到達できたが、前者はできなくなった。ステップ刺激では予測志向運動を行っていたネコは短潜時または長潜時の位置誘発型に移行したが、速度・位置誘導型指向運動からは長潜時の位置誘導型指向運動に移行した。脳幹網様体には、頸の指向運動と関係して2種類のニューロン、phasic sustained neuron(PSN)とphasic neuron(PN)、がある。PNは指向運動のサブタイプとはあまり関係せず発火したが、PSNは速度誘導型指向運動と良く一致した。この結果は上位中枢がPSNを選択的に制御することにより異なるサブタイプの指向運動を発現していることを示唆した。