- 著者
-
佐々木 渓円
平澤 秋子
山崎 嘉久
石川 みどり
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.1, pp.12-22, 2021-01-15 (Released:2021-01-30)
- 参考文献数
- 36
目的 乳幼児健康診査(乳幼児健診)では,生活習慣に関する問診が行われている。乳幼児健診の受診率は極めて高いため,問診結果を活用した地域診断が可能である。本研究では,幼児期における菓子や甘味飲料(甘い間食)の習慣的な摂取と生活習慣との関連性について,問診結果を活用して分析した。方法 対象地域は,個々の児の健診結果を突合できる愛知県内35市町村である。解析対象者は,2013年度の1歳6か月児健診(18 m)と2014~2015年度の3歳児健診(36 m)を同一市町村で受診した18,251人(男児,9,393人(51.5%))とした。「甘い間食」の習慣化に基づいて,次の4つのカテゴリに対象者を分類した。18 mと36 mで「甘い間食」の習慣化がないN-N群,18 mのみで習慣化があるY-N群,36 mのみで習慣化があるN-Y群,18 mと36 mで「甘い間食」の習慣化があるY-Y群である。その他の生活習慣は,望ましい習慣と望ましくない習慣の2水準に区分した。「甘い間食」の摂取のカテゴリを従属変数とし,生活習慣を独立変数とした多項ロジスティック回帰分析を行った。従属変数の対照カテゴリはY-Y群とし,独立変数の対照は望ましくない生活習慣とした。結果 対象者の構成比は,N-N群:Y-N群:N-Y群:Y-Y群=27.7:8.6:24.1:39.6であった。18 mでは48.2%の児に「甘い間食」の習慣化があり,その割合は36 mで63.7%に増加した。18 mで「甘い間食」の習慣化がある児の82.2%が,36 mでも「甘い間食」を習慣的に摂取していた。18 mで就寝時の授乳がないことが,N-N群(オッズ比[99%信頼区間]=1.25[1.11-1.41])やY-N群(1.28[1.07-1.52])と正の関連を示したが,N-Y群(0.99[0.88-1.11])との関連は認められなかった。18 mで親が仕上げ磨きをすることは,N-N群のみに正の関連を示す傾向を呈した(1.10[0.99-1.23])。結論 半数近くの児が18 mまでに「甘い間食」の摂取を習慣化し,その多くが36 mまでに改善できないことが示された。18 mにおける口腔衛生行動が,36 mまでの幼児の「甘い間食」の習慣的な摂取と関連していた。乳幼児健診の結果を活用した地域診断は,健康課題と関連する因子の同定に有用である。