- 著者
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徳竹 忠司
佐々木 皓平
- 出版者
- 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
- 雑誌
- 日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.2, pp.79-83, 2019 (Released:2020-05-20)
- 参考文献数
- 5
【はじめに】鍼治療における、治療計画の立案には様々な道程がある。POS 的思考に基づいた臨床
推論を行い、愁訴の責任部位の病態を把握し、刺激方法を検討する行為もその中の一つであると
考える。身体診察による情報収集に加えて既存の知識を活用し、患者の抱える問題の解決に当たる。
今回Travell らによって体系化された筋筋膜性疼痛症候群とトリガーポイントの概念が愁訴改善に
有用であった症例を体験したので報告する。【症例】59 歳 女性 【主訴】右膝関節周囲の痛み 【現
病歴】50 歳代前半から歩行時・階段昇時に右膝関節周辺に時々違和感が出現していた。痛みでは
なく、日常生活や仕事に際し支障もなかったため放置していた。58 歳時に深くしゃがむことが多
くなった頃から膝関節周辺の違和感が強くなり、痛みとして認識するようになった。歩行時には
時間や距離が長くなると膝関節周辺の痛みは必発していた。当科初診の1 ヵ月程前から座業時に
も膝周辺に痛みが出現するようになり、歩行時痛も以前より短時間・短距離でも出現するように
なったため、受診歴のある整形外科を受診した。X 線検査の結果、膝関節に特別な問題はないが
股関節の変形が以前より進んでいるとのコメントで、パップ剤を処方された。1 週間ほど前から右
大腿下部後面外側・膝関節外側面・下腿外側上部に疼痛が発生しパップ剤にても寛解しないため
同僚の紹介で当科受診となった。【理学的所見抜粋】右膝関節に関する痛みの誘発試験は全て陰性
であり、大腿部・下腿部の筋圧痛はなし。右股関節の回旋制限がみられ、小殿筋前部・後部線維
の抵抗負荷にて膝周辺に違和感の再現。小殿筋の圧迫による膝関節部の違和感の再現。【評価】小
殿筋トリガーポイントからの連関痛 【治療】右小殿筋 鍼通電 1Hz 15 分 【結果】初回の治療で膝
周辺の痛みは寛解し、以降同様の治療にて主訴は消失した。