- 著者
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藤井 亮輔
矢野 忠
近藤 宏
福島 正也
- 出版者
- 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
- 雑誌
- 日本東洋医学系物理療法学会誌 (ISSN:21875316)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.2, pp.87-95, 2017 (Released:2020-07-07)
- 参考文献数
- 8
【目的】あん摩マッサ-ジ指圧業の実態を需給の現状と業者の年収を中心に考察し当該行政の政策 検討の基礎資料に資する。 【対象】全国から収集した鍼灸マッサージ業者102,831件から抽出した20,000件を調査の客体とし た。 【方法】収集した業者名簿102,831件(施術所76,505件、出張専門業者26,326件)から層化二段 無作為法で抽出した施術所17,000件、出張専門業者3,000件に無記名式質問紙調査票を2016年10 月末に送付し同年11月18日までの回答を依頼した。 【結果】未着票(21.0%)を除く 15,793 通が有効に着信し 4,605 人(29.2%)から回答を得たが、 うち769人(16.7%)は休業中か廃業していた。この未着率、 休業廃業率や取扱患者数等の結果から、 営業中のあん摩マッサージ指圧(以下、あマ指という)業者は44,040件、同業者が2016年10月 に扱った延べ患者総数は3,822,000人(雇用者を含む)、実働あマ指師総数は88,900人が算出され、 同月にあマ指師1人が扱った延べ患者数は43人(営業24日/月換算で1日1.8人)と推計された。 また、前年分年収(中央値)は視覚障害者の128万円に対し晴眼者は400万円で、前者の42%が 100万円以下の階層に集中していた。 【考察】国民一世帯当たりの所得額の中央値を標準とすると2015年の同所得額(4,270,000円)は 月間90~120人分の施術料収入に相当する。この人数を充たすには概算で1日4~5人分の売り 上げが必要となるが、この格差(1.8人との差)は実働あマ指師の供給力余力の大きさを示す目安 と考えられる。一方、接骨院等の急増であマ指市場は供給超過にあり生活難に陥る視覚障害者が 急増している。よって、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律(以下、あ はき師法という)の第19条1項による職業選択の自由の制限は必要かつ合理的範囲内であり需給 の現状からも許容されると考える。 【結論】本研究により、あマ指師の供給力の余力幅が十分な規模にある実態と、晴眼者と比べて生 活難に陥る視覚障害業者が急速に増えつつある現状が明らかとなった。