著者
林 謙次郎 佐々木 義明 田頭 昭二 生田 尚子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.29, no.11, pp.785-790, 1980-11-05
被引用文献数
3

酸性溶液中でビスマス(III)イオンはチオ尿素と反応して黄色の可溶性錯体を形成する.この錯体は過塩素酸イオンとイオン対を作り,メチルイソブチルケトン(MIBK)あるいは酢酸エチルに抽出される.ビスマスの分配比に及ぼす各種因子の影響を調べ,抽出化学種は[Bi(thiourea)_2](ClO_4)_3であることが分かった.25℃,イオン強度3.60mol dm^<-3>における条件生成定数,イオン会合定数及び分配定数の値としてMIBK抽出系でそれぞれ3.0×10mol^<-2>dm^6,0.085 mol^<-3>dm^3及び6.0,又,酢酸エチル抽出系でそれぞれ5.2×10mol^<-2>dm^6,0.028mol^<-3>dm^9及び7.9が得られた.一方,水溶液中におけるビスマス,チオ尿素及び過塩素酸イオン相互間の反応を吸光光度法により調べた.その結果,錯体中のビスマスとチオ尿素のモル比は1:2であり,過塩素酸イオンが共存するとイオン会合体[Bi(thiourea)_2](ClO_4)_3が形成されることが分かった.この会合体の組成は先に求めた抽出化学種のそれと同一である.これらの反応に対応する条件生成定数及びイオン会合定数は24.2℃,イオン強度3.60 mol dm^<-3>でそれぞれ3.2×10 mol^<-2>dm^6及び0.14mol^<-3>dm^9であり,MIBK抽出系で求めた値とよく一致する.又,これら反応のΔH及びΔSの値も求めた.
著者
林 謙次郎 佐々木 義明 田頭 昭二 伊藤 和晴
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.T61-T64, 1981-06-05
被引用文献数
3

アルミニウム-アルミノンレーキの呈色は保護コロイドとしての分散剤の種類や濃度の影響を受ける.しかし,トリトンX-100のような非イオン性界面活性剤を分散剤として用いると安定な呈色が得られ,アルミニウムの弧光光度定量における従来法に比べ感度や精度の向上及び定量範囲の拡大をはかることができる.アルミニウムの定量について検討したところ,最大吸収波長537 nmにおけるモル吸光係数は2.2×10^4,感度は0.0012であり,(6.5×10^<-7>〜5.0×10^<-5>)mol dm^<-3> のアルミニウムの濃度範囲でベール則に従った.レーキ及びアルミノン中のフェニル基やカルボキシル基がトリトンX-100のポリエーテル部と水素結合してミセルの親水部分に吸着されて安定化され,その結果,スペクトルが変化し吸光度が増加すると考えられる.