著者
佐々木 輝雄
出版者
日本獣医生命科学大学
雑誌
日本獣医畜産大学研究報告 (ISSN:03738361)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.11-23, 2002-12-01

食料・農業・農村基本法, 食生活指針, 自治体レベルの農業関連条例, 自給率目標の設定, 食育, 食農教育, スローフード運動等, 近年, 食と農に関わる取り組みが盛んになってきた。しかも取り組みの起点が国家行政, 自治体行政, 地域住民組織, 農業団体, 農民グループ, 消費者団体と, 多面的且つ全国的広がりを見せてきている。ここがそれまでの動向と区別されるところである。さて, 各々の取り組み動機, スタート時点は異なれど, その目指す方向において共通性を有している。その方向は, それまで蔑ろにされてきた地域農業の振興であり, 農産物流通の改変である。これを具現化する方法として「地産地消」運動が展開されてきている。地産地消運動には, 生活様式をも変える様々な可能性が含まれている。伝統野菜栽培の復活, 食文化の継承, 農業と農村の活性化, 安全食品の確保等はすでに指摘されてきていることである。ところが, 地産地消運動が環境意識を高めて, 地域からの環境対策を推進するという視点が等閑にされてきた。そこで本稿では, 地産地消との関連で新たな市場原則と5つの環境命題を提示しながら, 新たな可能性の根拠を明らかにしたい。