著者
岩元 凜々子 佐久川 裕行 宮城 拓也 山口 さやか 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.22-25, 2021

<p>特に既往症のない 79 歳,男性。四肢に環状の紅斑が出現し,その後,胸痛,多発関節炎,有痛性皮下結節,発熱,リンパ節腫脹,上強膜炎が次々に生じ,最終的に,初発の皮膚症状の 4 カ月後に生じた耳介腫脹により,再発性多発軟骨炎の診断に至った。気道や心病変は合併しておらず全身状態は良好であるが,ステロイド内服と免疫抑制剤の併用では,いまだ病勢はコントロールできていない。<br>再発性多発軟骨炎は,軟骨組織を主体に多彩な全身性の自己免疫性の臨床症状を呈し,寛解再燃を繰り返す。半数以下の症例に皮疹を伴うが,皮疹自体も多様で特異的なものはない。自験例の様に,軟骨炎や鼻軟骨炎などの典型的な症状がない病期での診断は非常に困難である。</p>
著者
佐久川 裕行 山口 さやか 山城 充士 苅谷 嘉之 新嘉喜 長 山本 雄一 高橋 健造
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.94-98, 2020

<p>31 歳,女性。16 歳頃より自覚していた左足底の黒色斑が,妊娠 25 週頃より急速に増大し,隆起してきたため,妊娠 30 週で当科を紹介された。初診時,左足底に 18×10×2 mm の潰瘍を伴う黒色結節があり,悪性黒色腫を考え 10 mm マージンで全切除生検を行った。病理組織学的には,表皮真皮境界部を主体として,豊富なメラニン顆粒を含有し核小体の目立つ異型細胞が胞巣状に増殖しており,末端黒子型の悪性黒色腫と診断した。Tumor thickness は 3 mm,深部断端,側方断端は陰性であった。pT3bNXMX stage Ⅱb 以上の診断で,早期の全身検索および補助化学療法が必要と判断し,妊娠 32 週 4 日に経膣分娩で早期娩出した。胎盤や出生児に転移所見はなかった。出産後,全身検索,センチネルリンパ節生検を行い,末端黒子型悪性黒色腫 stage Ⅱb(pT3bN0M0)と診断し,術後の補助化学療法として,DAV-Feron 療法を 3 クール行い IFN-<i>β </i>の局注射療法を継続している。術後 4 年が経過しているが,再発,転移はない。</p>
著者
苅谷 嘉之 﨑枝 薫 眞鳥 繁隆 佐久川 裕行 仲村 郁心 高橋 健造 上里 博 宮城 恒雄
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.246-250, 2017

<p>69歳,女性。当科初診の 2 カ月前から急速に増大する右こめかみ部の紅色結節を自覚した。近医皮膚科を受診し,切除目的で当科に紹介された。当科初診時,結節は 14 × 13 mm で,弾性やや硬の表面が平滑な淡紅色のドーム状を呈していた。ダーモスコピー所見で結節は淡紅色を呈し,黄白色内容物が透見された。また,不整な白色線条や不規則に分岐する血管拡張がみられた。生検による病理組織像で毛母腫と診断したが,腫瘍成分に重層扁平上皮を伴っていた。一般に毛母腫は若年者に好発し,正常皮膚に覆われ硬く触れる皮内あるいは皮下結節が多いが,表面に突出する腫瘤など多彩な臨床像を呈することもある。 本稿では高齢者に生じた毛母腫の症例を集計し,また非典型的症例ではダーモスコピー所見が毛母腫の診断に有用である可能性が示唆されたので報告した。</p>