著者
苅谷 嘉之 﨑枝 薫 眞鳥 繁隆 佐久川 裕行 仲村 郁心 高橋 健造 上里 博 宮城 恒雄
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.246-250, 2017

<p>69歳,女性。当科初診の 2 カ月前から急速に増大する右こめかみ部の紅色結節を自覚した。近医皮膚科を受診し,切除目的で当科に紹介された。当科初診時,結節は 14 × 13 mm で,弾性やや硬の表面が平滑な淡紅色のドーム状を呈していた。ダーモスコピー所見で結節は淡紅色を呈し,黄白色内容物が透見された。また,不整な白色線条や不規則に分岐する血管拡張がみられた。生検による病理組織像で毛母腫と診断したが,腫瘍成分に重層扁平上皮を伴っていた。一般に毛母腫は若年者に好発し,正常皮膚に覆われ硬く触れる皮内あるいは皮下結節が多いが,表面に突出する腫瘤など多彩な臨床像を呈することもある。 本稿では高齢者に生じた毛母腫の症例を集計し,また非典型的症例ではダーモスコピー所見が毛母腫の診断に有用である可能性が示唆されたので報告した。</p>