著者
矢島 義昭 平沢 堯 佐伯 武頼
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1682-1689, 1980-12-25 (Released:2010-01-19)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

血中アンモニアが規則的な日内変動を示す48歳の男性が,血清アミノ酸分析及び尿素サイクル酵素定量より成人型シトルリン血症と診断された.1日蛋白量を50g以下に制限し,lactulose 30ml~40mlを1週間に及んで投与したが,アンモニアの改善はみられなかった.次に従来,肝性昏睡治療薬として用いられてきた4種のアミノ酸製剤の効果を比較検討した.glutamateとarginineの合剤とglutamateの単剤がほぼ同等のアンモニア下降作用を示したことより,glutamateが有効であることが分った.一方,citrateの経口投与もglutamateの静注とほぼ同等の効果を表わした.citrate投与2時間後の血清アミノ酸分析ではglutamateが増加し,citrullineが低下していた.以上の事実より,citrate→α-ketoglutarate→glutamate→glutamineの反応系が血中遊離アンモニアの処理に有効に関与していることが示唆された.
著者
星 奈美子 迎 慎二 新澤 穣太郎 渡邊 茂 粕川 禮司 折笠 博史 小林 圭子 佐伯 武頼
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.492-497, 2002-11-25
被引用文献数
6 6

1996年4月, 29歳時に発症した成人発症II型シトルリン血症の男性. 特殊ミルク (高アンモニア血症・シトルリン血症フォーミュラ<sup>®</sup>) の内服で3年間症状の改善が認められたが, 1999年に, 血清アンモニア値の上昇とともに脳症のコントロールが困難となった. そこで経口アルギニン製剤 (アルギU顆粒<sup>®</sup>) を投与したところ, アンモニア値の正常化と脳症の改善が認められた. しかし8カ月後の2001年3月に再びアンモニア値の上昇と脳症が出現し, 約5年の経過で死亡した.
著者
星 奈美子 迎 慎二 新澤 穣太郎 渡邊 茂 粕川 禮司 折笠 博史 小林 圭子 佐伯 武頼
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.492-497, 2002-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
6 6

1996年4月, 29歳時に発症した成人発症II型シトルリン血症の男性. 特殊ミルク (高アンモニア血症・シトルリン血症フォーミュラ®) の内服で3年間症状の改善が認められたが, 1999年に, 血清アンモニア値の上昇とともに脳症のコントロールが困難となった. そこで経口アルギニン製剤 (アルギU顆粒®) を投与したところ, アンモニア値の正常化と脳症の改善が認められた. しかし8カ月後の2001年3月に再びアンモニア値の上昇と脳症が出現し, 約5年の経過で死亡した.
著者
佐伯 武頼
出版者
日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.545-554, 2004-11-20
被引用文献数
3

カルニチンは, 発見当初, ビタミンBTと称されたが, 生体内で合成されるので, ビタミンではないとされた. しかし, 厳格な菜食主義者やカルニチンを含まないミルクを投与された乳児では血中のカルニチンは低下する. 老齢者ではカルニチン投与の効果が報告されている. また, さまざまな病態で血中濃度が低下し, 薬理作用を含め, カルニチンには多彩な機能が想定されている. 基本的には, カルニチンの機能は, 長鎖脂肪酸の酸化においてアシルCoAをミトコンドリアヘ輸送する担体となることである. また, カルニチンアセチル転移酵素の作用によってアセチルCoA/CoA比の制御にかかわっている. さらに, 先天性代謝異常症において蓄積するアシル化合物や, 投与される薬剤のアシル化合物の排泄に重要な役割を果たしている. 薬理的な量のカルニチン, およびアセチルカルニチンに関しては, 抗酸化作用やアポトーシス抑制の作用などが報告されている. 本稿では, われわれが数年来解析を進めているカルニチン欠損マウスにおける多彩な症状が, どのような機構によって生じるかを明らかにして, カルニチンの生体作用を解明しようと試みている現状について述べる.