著者
佐伯 清美 西堀 正洋
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

脳のモノアミン類の神経性取り込みに及ぼす抗ヒスタミン薬(H_1受容体拮抗薬)の影響を脳内モノアミン代謝脳変化を指標にして検討した。モノアミン類とその代謝産物は、脳ホモジネ-トの遠心上清を直接あるいは精製操作後に高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)・電気化学検出法で分析することにより測定した。クロルフェニラミンは1mg/kg(i.p.)以上の用量で脳内5ーHIAA量を、5mg/kg以上でDOPAC量を減少させ、ジフェンヒドラミンは10mg/kg以上でDOPAC量を、20mg/kg以上で5ーHIAA量を減少させた。メピラミンは20mg/kg以上で5ーHIAA量減少させたがDOPAC量に影響しなかった。プロメタジンは20mg/kgでMHPG量を増加させた。メピラミン以外の薬物は10mg/kgでαーメチルーpーチロシンによるドパミン減少を抑制したが、ノルアドレナリン減少はプロメタジンにより逆に促進され、他の薬物では影響されなかった。パ-ジリンによる5ーHT蓄積はH_1拮抗薬により影響されなかった。以上の結果から、(1)ジフェンヒドラミン、クロルフェラミンおよびメピラミンは脳内ノルアドレナリン系に対してその伝達物質再取り込みにほとんど作用を示さない、(2)メピラミンはドパミン系に対してもほとんど作用を示さない、(3)ドパミンの神経性再取り込みはジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンによって阻害され、その代謝回転も抑制される、(4)ジフェンヒドラミンとクロルフェニラミン(特にクロルフェニラミン)ならびにメピラミンは5ーHTの再取り込みを阻害するがその代謝回転には影響しない、(5)プロメタジンはドパミンの代謝回転を抑制するがノルアドレナリンの代謝回転を促進すると結論した。