著者
福本 一朗 織田 豊 佐橋 昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MBE, MEとバイオサイバネティックス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.304, pp.1-6, 2005-09-15
被引用文献数
1

2004年は中越大震災やインド洋大津波などの大規模な自然災害に見舞われた年であった。ただ新潟県においては6400名の死者を出した1966年の阪神淡路大震災の教訓を生かせたために、地震の二次被害も少なく、死者が46名に止まったことは不幸中の幸いであった。しかし筆者の避難所救護活動の経験からも、ライフラインの廃絶した孤立都市での医療安全に関しては、ハード・ソフトともにこの10年ほとんど改善が見られなかったと言わざるを得ない。本研究では大災害時における病院・診療所・避難所などにおける医療活動が必要最低限確保できるための医療安全システムに要求されるスペックを考察するとともに、抗堪性の高い医療機器を作り上げるための基礎研究を行うとともに、バイタルサイン計測装置・避難所救急医療電子カルテ装置・診療情報伝送システムなどを開発することを目的とした。本研究はさらには最低限の供給が望まれるessential drugとその常備方法などのハード面および、緊急時医療福祉通信システムや災害時の高齢者福祉システム・医療従事者リクルーティングシステムや緊急時食料・備品の配布システムなどのソフト面に到るまで総合的な大災害時医療安全システムについての調査検討と行政と市民に対する提案に繋がるものである。