著者
佐藤 アヤ子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

環境破壊、種の絶滅、遺伝子工学等に警鐘を鳴らすカナダの作家マーガレット・アトウッドは、環境の危機を人間に伝えるには、「理解の神経回路」を作る物語や文学を含む芸術が必要と強調した。この「理解の神経回路」こそ、出口のない従来のディストピア小説とは違う〈新ディストピア小説〉の構想と解釈し、〈マッドアダム〉の物語である三部作Oryx and Crake(2003)、The Year of the Flood(2009)、MaddAddam(2013)で分析し、アトウッドが希求する〈新小説作法〉を考えた。
著者
佐藤 アヤ子
出版者
明治学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

Identity Politicsが声高に叫ばれていた90年代、マイノリティ作家と呼ばれていたカナダ先住民作家及びアジア系カナダ人作家の文学をグローバルとローカルを融合させた「グローカル」性という新しい概念で分析した。白人優勢の社会で、従来の支配者、被支配者という二元的な構図で創作するのではなく、彼らの作品が、グローバルに普遍なるものへの同化と同時に、自らの出自である母語や伝統的なローカル文化を作品の中に取り入れ、個別と普遍を融合させた「グローカル」性という新しい文学理念に向かっていることに注目した。この分析法は、内外においても本研究が初めてであり、新しい文学分析として今後活用されよう。
著者
小畑 精和 佐藤 アヤ子 曽田 修司 藤井 慎太郎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

シルク・ド・ソレイユを筆頭に,R.ルパージュの演劇,ラ・ラ・ラ・ヒューマン・ステップスなどのダンスなど近年隆盛を極めているケベックのパフォーミング・アーツを分析し,製作者(劇作家・演出家・俳優・パフォーマー)や受容者(観客・評論家)の観点からばかりでなく,政策や経営も含めた文化状況全体の中で,パフォーミング・アーツを考察した。また,連邦政府の提唱するマルチカルチャリズムと,ケベック州政府が推進するインターカルチャリズムの比較を行った。研究を通して,その発展の大きな要因として,ケベック州政府の文化政策があることを明らかにした。その成果の一端を昨秋の日本カナダ学会第33回年次研究大会(9月21日セッションIII,皇学館大学)で三人がそれぞれ発表した。