著者
岩本 晃明 佐藤 三佐子 古市 泰宏 野澤 資亜利
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

当研究は当初「国際学術研究」として申請・採択されたものであり、国外研究協力者のMcGill大学・Gagnon教授との共同研究により、精子運動抑制因子(SPMl)およびその前駆体のSemenogelin(Sg)を中心として研究を行い以下の知見を得た。(1)従来より精漿蛋白は精子のcapacitationに関与すると言われており、ヒト精子capacitationに対するSgの影響を検討した。ヒト臍帯血に含まれる分子量3KDa以下の低分子成分(FCSu)を用いてcapadtationを誘発した。Sgの存在によりヒト精子のhyperactivationが抑制されるのが観察されたが、運動精子を用いたアッセイ系の不安定さや、精子自動分析機による解析が困難で、明らかな濃度依存性は見いだせなかった。つぎにacrosome reactionを指標とした検討で、Sgは濃度依存性にヒト精子のcapacitationを抑制することが判明した。Xantine oxidaseを用いたケミルミネッセンスの測定から、その作用機序はO_2^-の生成抑制であることが明らかになった。また、Sgは精製精子とインキュベーションすることで分解を受け、その分解産物も同様にヒト精子のcapacitationを抑制することをも見いだした。この結果より、SgおよびSPMlは精子のcapacitationに関与していることが示唆された。(2)男子不妊症および正常男性の一部にSg遺伝子の欠失が見られたことから、この変異型蛋白の機能を解析中である。また、DNA二次元電気泳動法によりSg遺伝子のSNP検索を行っているが、現在のところSNPは確認されていない。(3)組換え型Sg(r-Sg)蛋白の発現に成功し、多量の高純度・高活性r-Sg蛋白の精製が可能になった。このr-Sgを抗原として作製した抗体は、天然型SgやSPMlとも特異的に反応した。