著者
佐藤 乾 藤田 稔 佐伯 浩
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.318-325, 1990-12-20

熟成したモルトウイスキーの香味は, 樽材の性質, とくに, その組織や抽出物に負うことろが大きいと言われている。本報告では, モルトウイスキーの樽材中での分布を明らかにし, 樽材の組織とモルトウイスキーの浸透性を検討した。また樽材中のアルコール抽出物の分布も調べた。その結果, モルトウイスキーの樽材中での含有量は内表面側から外表面側に向かって低下するが, その全体の量は大変大きなものであり, モルトの総欠減量の半量にも達することが明らかとなった。樽材中のアルコール抽出物の割合は内表面側で低く, 中ほどで高い分布を持ち, 内表面側のそれはモルトウイスキー中に溶解されたことを示している。モルトウイスキーの浸透深さと年輪幅あるいは追柾角度との間に, 一定の関係は見られなかった。