著者
丹野 浩一 佐藤 友章
出版者
宮城工業高等専門学校
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

近年、VOC、室内感染症、高齢化に伴う介護環境問題、ヒートアイランド現象、多様なウイルス疾病など衛生環境の悪化が問題になっている。これに伴って抗菌・坑かび材料の開発が活発に行われ有機系材料については2億円市場にも成長している。最近は無機系材料の開発にも関心がもたれ、酸化チタンなど光触媒材料が市場化されている。しかしながら光触媒系が効力を発揮するためには光源が必要であり、使用環境が限定される。本研究では多様な環境下で抗菌効果を発揮できる材料の開発を目的として、光触媒、非光触媒系複合抗菌材料の開発に関する基礎研究を行った。本研究成果が対象とする分野は、緑化計画に伴う植栽によるビル外壁のクラックの汚染、内装建材、介護環境の抗菌、排水管の抗菌やバイオコロージョン防止、水質汚濁の防止などである。本研究では、光触媒から酸化チタンを、そして非光触媒から抗菌性が証明されている貝殻、抗菌性金属などを用い、これらの複合粒子を作成し、それを焼結した。基礎研究として粒子単体の抗菌性、複合粒子の抗菌性、焼結体の抗菌性についてそれぞれ実験し比較検討した。その結果、試料単体の抗菌性については従来公表されている結果とほぼ同等の抗菌性があることがわかった。また、複合粒子とした場合には各抗菌要素の相乗効果が作用し、紫外光の有無にかかわらず、ほとんどすべての試料について抗菌性の発現が認められた。これに対し、焼結した試料については抗菌性は試料によって大きく異なる結果を呈した。PH測定などの結果、焼結により組成の変化が生じ、場合によっては中和傾向となる様相を呈し抗菌性が低下することが判明した。なお、研究推進における調査過程で将来の応用を考えた場合に環境影響にも配慮することの重要性が指摘されたため、本来目的としていた要件のひとつであった金属元素の効力比較については今回の実施を見合わせた。