著者
佐藤 和喜
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.62-74, 1987-05-10 (Released:2017-08-01)

万葉から古今への変容において重要なのは、繰り返し表現が論理的な表現に改められていくことであり、これによって律調も五七調から七五調に転換していくと見ることができる。歌経標式はこの和歌史の変容に自覚的であったようであり、万葉的な五七調の歌に基づいて比喩論を展開するとともに、音韻論において、繰り返しを主な方法とする五七調の歌を否定的に捉え、論理的な表現をしている七五調の歌を称揚している。これは歌経標式が歌を記載されたものとして分析・鑑賞しているからであると言うことができる。