著者
佐藤 邦子 佐藤 孜郎
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.28, no.7, pp.467-470, 1977-10-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
5

3種の調理条件, すなわち, 5分間水戻し (試料A), 5分間水戻し後15分間煮熟 (試料B), 5分間水戻し後5%酢酸溶液に15分間浸漬 (試料C), で処理したわかめの物理性状とアルギン酸の性状とを調べた.その結果, 以下の諸点が明らかになった.1) 破断力および硬さはBが最も低く, Cが最も高かった.2) 水溶性アルギン酸 (SA) 含量は煮汁中に溶出した部分を考慮すると, AとBはほぼ等しく, Cはそれらより低かった。不溶性アルギン酸 (IA) 含量はCが最も高く, AとBはだいたい等しくCより低かった.3) アルギン酸ナトリウム水溶液を沸とう水中15分間加熱すると著しく粘度が低下した.しかしながら, 食塩を添加したものでは加熱前後の粘度にあまり変化がみられなかった.DEAEセファデックスカラムクロマトグラムは3種の試料いずれも同一であった.4) 試料CのSA区分のナトリウムとカリウム含量, ならびに残渣中のカルシウムとマグネシウム含量はいずれも他の2試料の1/2ないし1/3であった.以上の結果から, 煮熟によるわかめの軟化は総アルギン酸含量の減少とアルギン酸分子の分散状態の変化がその大きな要因であろうと推測され, 酢酸処理による硬化は遊離アルギン酸の生成による不溶性アルギン酸の増加がその大きな要因と考えられる.