著者
吉野 陽子 神山 麻子 佐藤 宣雄 鈴木 正成
出版者
特定非営利活動法人 日本咀嚼学会
雑誌
日本咀嚼学会雑誌 (ISSN:09178090)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.77-83, 2003

幼児から高齢者までの幅広い年齢層を対象として咀嚼力を調べ, これらが環境要因である体格や運動習慣, および遺伝的要因と関連があるかどうかを検討することを目的とした. 調査対象者は女性1, 337名, 男性767名の計2, 104名であり, 年齢は3~97歳であった. 咀嚼力は, チューインガム法による糖溶出量を指標とした. 質問形式によって身長と体重, 運動習慣の有無, および家族構成を調べた.<BR>咀嚼力が体格指数であるBodyMassIndex (BMI) と関連があるかどうかを調べた結果, 各年代別では有意差の認められた年代はあったが, 一様の傾向はみられなかった. したがって, 肥満と咀嚼力の間には有意な相関はないと考えられた.<BR>運動習慣との関係を調べたところ, 男性では19~29歳を除いた年代において, 運動習慣のある人はない人に比べて咀嚼力が高かった. 女性では, すべての年代において運動習慣のある人のほうが咀嚼力は高かった.<BR>咀嚼力と遺伝的要因との関係を調べるために, 同一家族内で咀嚼力がどの程度関係しているかを検討した. その結果, 夫婦間ではあまり関係がみられなかった. したがって, 環境要因単独では咀嚼力に影響を与えないことが示唆された. また, 親子間 (父子, 母子) および子ども間 (姉妹, 兄弟) で関連性がみられた. したがって, 遺伝的要因単独, あるいは環境要因と遺伝的要因の双方が咀嚼力と関与するのではないかと考えられた. また, 父と子の間では息子のほうが, また母と子の間では娘のほうが咀嚼力の程度は一致する割合が高いことが示唆された.