著者
泉 桂子 佐藤 康介
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.1-15, 2021 (Released:2021-08-14)
参考文献数
26

ロッククライミングは近年森林スポーツの一種として普及しつつある。今後森林内の岩場を利用するクライマーの増加 とそれに伴う地域社会や他の森林利用者との軋轢の発生・顕在化が予想される。本研究の目的は,軋轢の調整に成功しているロッククライミングエリアの運営実態の解明と,クライミングが地域活性化に与える影響の把握である。対象地は岐阜県の笠置山クライミングエリアであり,地域の住民や組織とクライマーが相互協力の関係にあり,かつクライマーから入山協力金を徴収している。運営については地域の財産区を母体とする地域住民団体と近隣地域のクライマーからなる愛好者団体が連携を保っていた。その一方でエリアの運営資金確保には困難も見られた。エリアの開設には明治期の旧村有林に起源を持つ笠置財産区有林が重要な役割を果たした。さらにクライマーへのアンケート調査 (n=46) によれば,宿泊を含むエリア周辺での消費支出は低調であり,コンビニエンスストア以外の施設の利用も少なかった。しかしながらその来訪回数はリピーターが8割以上を占め,居住地,クライミング歴や年齢層は幅広く,多様なクライマーがエリアを訪れていた。