著者
佐藤 文信
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、X線マイクロビームを用いて、神経細胞め分化を制御し、人工的に配列された神経回路モデルを製作する。神経モデル培養細胞PC12は、放射線照射によってNGF成長因子を必要とせずに神経突起を成長させることが報告されている。卓上型のX線マイクロビーム照射装置を用いて、単一のPC12細胞に照射し、細胞の分化制御を行う技術を開発する。予備実験として、PC12細胞を培養シャーレで培養し、PC12のCo-60γ線照射を行った。吸収線量は最大10Gyで、細胞核内のDNA二重鎖切断の指標となるγ -H2AXの産生を蛍光抗体法で調べた。γ線照射直後では、γ -H2AXを示す応答が最大となり、24時間後には、修復作用によって10%程度まで減少していることが判った。また、4〜5日後より、神経突起を成長させる細胞が現れ、全体の20%のPC12細胞が分化することが判った。人工的に細胞を配列するためにマイクロチェンバーアレイチップを製作した。マイクロチェンバーアレイチップは、SU-8感光樹脂を用いてフォトリソグラフィーでガラス基板上に形成した。細胞を格納するための1個の容器の大きさは40x40μmで深さ15μmとなっている。また、オートクレーブで滅菌処理し、表面にゼラチン層を塗布した。マイクロチェンバー内にPC12細胞が培養されたサンプルを用意し、X線マイクロビーム照射装置を用いて最大10Gyまで照射した。γ線実験と同様に、照射直後では、γ -H2AXを示す応答が最大となり、24時間後には応答は小さくなっていた。ただし、神経細胞の分化については、ターゲット細胞の数%以下で見られ、γ線をもちいた場合と比較して、低い値となった。