著者
佐藤 桑 野々村 美宗
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.90, no.9, pp.315-318, 2017-09-20 (Released:2017-09-27)
参考文献数
4

液体の粘度が撹拌行動に及ぼす影響を明らかにするために,20人の被験者が1.47~1.03×103 mPa・sの液体を棒で混合して液中に存在するジルコニアビーズを分散したところ,粘度の上昇とともに「広がりやすさ」の官能評価のスコアが低下しただけでなく,分散に必要な撹拌時間も長くなった。さらに,液体の粘度によって四つの撹拌パターンがあらわれた。すなわち,1.47 mPa・sの液体を撹拌するときは,80%の被験者が大きく円を描くCircle patternだったのに対し,1.03×103 mPa・sの液体では,線を引くような直線状の動きで撹拌するStraight patternや小さい円を描くSmall circle patternが観察された。これは,高粘度液体中では撹拌動作によって発生したエネルギーが散逸し,ビーズがシャーレの一部にしか広がらなくなったため,被験者がより効率の良い撹拌運動に切り替えたためと考えられる。このようなパターンの変化は,ヒトは液体を撹拌する際に,液体の粘性をセンシングし,それに基づいて運動を調節していることを示している。