著者
佐藤 正春 中原 謙太郎 入山 次郎 岩佐 繁之 森岡 由紀子 須黒 雅博
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EMD, 機構デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.168, pp.13-18, 2003-06-27

安定ラジカルの酸化還元反応を動作原理とする有機ラジカル電池は充放電反応の速度が大きく、高効率で、可逆性も良好であるという特徴を有している。このため、有機ラジカル電池は短時間で充電でき、高出力で、充放電サイクル寿命も長いという、二次電池としては理想的なものとなりうる可能性を有している。ここでは有機ラジカル電池の特徴を活かした用途として、サーバーやルーターなどの情報関連機器に内蔵可能な小型で高出力の電池への応用を検討した。その結果、安定ラジカル化合物、ポリテトラメチルピペリジノキシメタクリレートを正極活物質として、電極面積50×72mm、厚さ5.7mmで容量130mAh、限界出力13.3Wという高出力電池の試作に成功した。一般的なリチウムイオン電池と比べると、試作した有機ラジカル電池の容量密度は1/10以下であるが、限界出力密度は639W/Lと、約2倍に達した。この電池(4個直列)は小容量ではあるがデスクトップパソコンを短時間動作することが可能であり、電源非常時におけるデータ退避用補助電源として利用できることが明らかとなった。