著者
茂庭 仁人 湯藤 潤 本江 環 進士 靖幸 永原 大五 高橋 亨 林 学 佐藤 直利 鹿野 泰邦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.555-560, 2008-06-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
20

症例は49歳,女性.2006年4月に急性下壁心筋梗塞を発症し右冠動脈(#2)にシロリムス溶出ステントを留置した.術後の抗血小板療法としてアスピリン100mg,チクロピジン200mgを投与開始した.6カ月後の確認冠動脈造影ではステント内再狭窄を認めなかったが,遅発性ステント血栓症予防のため,アスピリン,チクロピジンは継続投与していた.2007年3月,月経による大量出血をきたし,意識障害を主訴に救急外来を受診.Hb 3.5g/dLと高度な貧血を認め頭部MRIでは多発性脳梗塞を認めた.輸血やエダラボン点滴など保存的に治療し,軽度の構音障害が残存したものの軽快退院となった.抗血小板薬投与中の出血性合併症はしばしば経験するが,月経出血による重篤な合併症の報告は稀である.閉経前の女性に対する抗血小板療法中には慎重な観察が重要であると考えられた.