著者
神津 博幸 王 政 王 在天 中嶋 光敏 Neves Marcos A. 植村 邦彦 佐藤 誠吾 小林 功 市川 創作
出版者
Japan Society for Food Engineering
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
pp.17505, (Released:2018-05-19)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

微小油滴を包括させたエマルションハイドロゲルは,その力学特性と組成が容易に調整できることから,モデル食品として使われている.著者らが開発してきたヒト胃消化シミュレーター(Gastric Digestion Simulator; GDS)は,胃のぜん動運動を模擬可能であり,消化中の食品の崩壊過程の再現と観察をすることができる.本研究では,GDSを用い,様々な力学特性を有するエマルションハイドロゲルの胃消化挙動について検討することを目的とした.微小油滴(大豆油)を包括させたエマルションハイドロゲルを,次の4種類のゲル化剤の組合せで調製した:寒天(AG),寒天+ネイティブ型ジェランガム(AG-NGG),脱アシル型ジェランガム(DGG),脱アシル型ジェランガム+ネイティブ型ジェランガム(DGG-NGG).GDSを利用したin vitro消化試験において,DGGとDGG-NGGのエマルションハイドロゲルは,ぜん動運動により発生微小油滴が放出されることなくゲル粒子が収縮した.一方,AGとAG-NGGのエマルションハイドロゲルでは,ゲル粒子が崩壊し,微小油滴が放出された.また,AGと比較してAG-NGGの方が,崩壊率と放出率が共に低くなることがわかり,崩壊率と放出率には線形の相関関係があることが明らかになった.これら2つのエマルションハイドロゲルでは,破断応力と破断歪率がそれぞれ異なっていた.本研究の結果により,ヒトの胃において,脂質の含有量を変えることなく,ゲル粒子からの脂質放出量を制御できる可能性が示唆された.