著者
島田 浩基
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.115-118, 2014-06-15 (Released:2014-09-24)
参考文献数
4
著者
平塚 広 竹野 健次 佐々木 健
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.105-111, 2004-06-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
7

鉄瓶は古くから茶器として利用されて来たが, 最近, 粗悪で安価な鉄瓶が出回り, 市場が混乱している.我々は鉄瓶の品質を科学的に解明する一つの方法として, 加熱の際での水質変動を追跡し, さらに味との関係の検討を行った.南部製と外国製の鉄瓶に水道水を入れ, LPGガス加熱調理器で加熱し水質変動を追跡した.南部鉄瓶 (三笠および丸南部) の場合では水質に変化はそれほど認められなかったが, 外国製の鉄瓶では硬度, pH, 重炭酸イオンの上昇などの急激な水質変化が認められた.すなわち, 外国製のある鉄瓶では30分加熱で硬度が19.00mg/Lから53.00mg/L, pHが7.00から9.40, 重炭酸イオンは14.00から30.40mg/Lに変化した.さらに南部, 外国製双方の鉄瓶で沸騰させたお湯で, 抹茶を立て成分分析をしたところ, 南部鉄瓶では抹茶のアミノ酸溶出が外国製に比べ速やかであることが確認された.
著者
熊谷 仁
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.123-134, 2008-09-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
13
被引用文献数
11 7

食品の内部の構造や状態を反映する電気物性および誘電緩和について概説した.物体の電気的な特性としては, 大きく分けて電気 (電荷) を蓄える性質と電気を流す性質があるが, 電気を蓄える“能力”を表すのが誘電率ε', 電気の通り易さを表すのが電気伝導度σ'である.また, 解析の便のために誘電損失ε” (=σ'/ (2πfe0) : e0, 真空の誘電率; f, 周波数) を用いることも多い.電気物性の測定において, 試料に交流電場を印加すると, 周波数fの増加に伴って内部の電気双極子が電場の変化に追随できなるため, 誘電率ε'が低下し, 同時に電気伝導度σ'が増加, 誘電損失ε”がピークを示すことがあるが, この現象が誘電緩和である.誘電緩和のデータをCole-Cole式やCole-Davidson式などの半経験式を用いて解析することにより, 電気双極子の配向時間に相当する緩和時間τをはじめとする重要なパラメータが求められる.対象とする系, 測定周波数によって, さまざまな種類の電気双極子の配向に起因する誘電緩和が観測され, 系の内部構造や状態に関する様々な情報が得られる.例えば103~107Hz近辺で観測される緩和は, 球状タンパク質であるBSA溶液では分子回転による配向分極に, ゼラチン溶液では分子鎖の揺らぎに, 高分子電解質溶液では対イオンの揺らぎに, W/Oエマルションでは水一油界面での界面分極に起因する.誘電緩和データから, 系の構造についての詳細な情報を得るには, スケーリング則などの理論を併用することが有効である.
著者
酒井 昇
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.19-30, 2010-03-15 (Released:2015-06-18)
参考文献数
18
被引用文献数
1 4

電子レンジを始めとしてマイクロ波加熱は,速く簡単に加熱・調理できることから,食品産業で良く利用されている.しかし,加熱速度が大きい半面,加熱むらも大きいなど問題も残っている.マイクロ波を照射したとき,被加熱物の加熱性を決めるのは誘電物性であることから,食品の誘電物性を知ることは重要である.本稿では,まずマイクロ波加熱の原理とマイクロ波加熱における水の役割について説明した.次に,水分濃度および塩分濃度の誘電物性に及ぼす影響について説明した.水分が減少することにより誘電率が減少し,塩分濃度が増えることにより誘電損率が増大する.最後に解凍にともなう物性変化について説明した.氷が融解するとき熱物性が変化するのと同時に誘電物性が大きく変化するため,ランナウェイ現象の原因となる.
著者
石渡 奈緒美 福岡 美香 為後 彰宏 酒井 昇
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.19-28, 2013-03-15 (Released:2015-06-18)
参考文献数
27
被引用文献数
4 8

真空調理法によるローストビーフ調理を対象として,非定常三次元伝熱解析に基づきタンパク質変性度の内部変化,ならびに大腸菌O157:H7を対象とした菌数減少予測計算を行うことで,畜肉の品質および安全性について工学的側面から考察した.加熱調理中のタンパク質変性度を予測するため,DSC-Dynamic法を用いて各タンパク質の変性速度パラメータを算出した.調理終了時,ミオシンは肉内部全ての位置において変性が終了していたのに対し,アクチンは表面部分のみ変性が進行し,肉中心部では未変性の状態が保たれていた.この特徴的な変性分布が真空調理法を用いた畜肉調理で高い品質が得られることが示唆された.これに対して菌数減少の予測結果から,調理温度の低いレシピでは,表面領域においてのみ,殺菌効果が期待できると明らかとなった.すなわち,食材の選定が重要であること,製品の貯蔵・流通時の温度管理と,調理空間の衛生管理を徹底する必要があると改めて提示された.
著者
藤川 浩
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.65-78, 2002-09-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
50
被引用文献数
1

There have been reported many mathematical models for thermal inactivation of microorganisms in food. The basic models are an inactivation-technology model using D value and a chemical reaction model using a first order reaction. The former model is easy to handle, but hard to express non-linear survivor curves. The latter has a potential to describe non-linear curves. There are also empirical models to describe sigmoidal survivor curves of microorganisms during the heating period. Recently the interests of food scientists have focused on predictive microbiology models. Two expert software programs, Food Micromodel and Pathogen Modeling Program, are now available. During the heating process of a food product, the temperature of it changes. The temperature history of a food product is necessary for estimation of thermal inactivation of contaminants in it. F value may not directly indicate the magnitude of thermal death, but it can be a measure of thermal inactivation for a heating process. Also, a simple simulation of thermal inactivation of a pathogen contaminating a hamburger pate on a heated plate was performed using the heat conduction equation. A systematic model for thermal inactivation of microorganisms in food products that predicts the optimized thermal process of the products will further need to food industry.
著者
渡辺 学 三堀 友雄 酒井 昇
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.269-278, 2005-12-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
5

炒め調理過程の伝熱メカニズムについて検討した.モヤシを材料に用いて, 攪拌を行わない静止状態のバルクにおける温度分布の実測を行った結果, 加熱面に接触していないモヤシ片ではほとんど温度上昇がみられないことが明らかとなった.このことから, 炒め調理における攪拌とは, 強制的な物質移動によって熱拡散を代替するための操作であり, 伝熱という面でも非常に大きな役割を担っていることがわかった.以上の知見に基づき, 様々なバルクの伝熱特性を定量的に評価するために1層厚さ, 接触率という特性値を導入し, さらに攪拌頻度をパラメータとして攪拌に起因する熱拡散のモデル化を行うことにより, バルク温度の時間変化を計算で求める手法を構築した.計算結果の1例より, 加熱面とバルクの間の熱伝達率を推算したところ155W/m2Kとなり, 本モデルによりまずまず妥当な結果を得られることが確認できた.
著者
小川 剛伸 安達 修二
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.91-107, 2012-12-15 (Released:2015-06-18)
被引用文献数
1 1

Microsoft Excel® is most popularly used spreadsheet software. Although figures can be drawn using the software, their quality seems to be unsatisfactory for the use in scientific papers or reports. The quality can be improved using Microsoft PowerPoint®, which is also software in Microsoft Office® and is widely used as a presentation tool. A rough figure is prepared based on the data in the Excel, and it is modified to fine one using the PowerPoint. It will be explained how to draw fine figures using both the software.
著者
三上 隆司
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.191-197, 2009
被引用文献数
1 10

著者らは,米の食味を迅速にかつ客観的に評価したいという要求に応え,いち早く食味計を開発し市場に送り出して来た.本稿では,米の食味の品質評価装置の開発という内容で解説した.また,これまで公表していなかった食味計開発の歴史的な部分も一部紹介させて頂いた.食味鑑定団に至る考え方と,それに必要な機器(炊飯食味計,シンセンサ,硬さ・粘り計)についての開発の経過と必要性についても述べた.そして,これら機器を使用した食味鑑定値の表示と,それぞれの機器を使用した用途別分類方法についても,新しい提案ができた.この食味鑑定値は,より官能検査値に近い値となり米の評価,ご飯の評価に有効に活用して頂けるものと考えている.
著者
浅野 一朗 藤井 繁佳 尾崎 和人 竹原 功 矢野 夕幾 福原 育夫
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.133-141, 2005-06-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
17
被引用文献数
8 9

コーヒー飲料製造業において, コーヒー抽出粕は燃料や産業廃棄物として処理されている.コーヒー抽出粕にはβ-マンナンが多く含まれており, 著者らはコーヒー抽出粕の有効利用法として, 抽出粕に含まれるマンナンを加水分解して得られるマンノオリゴ糖 (MOS) の生理機能性について検討してきた.本研究では, MOSを含むコーヒー飲料の体脂肪に及ぼす影響について, 二重盲検ヒト試験で検討した.肥満 (1度) (25kg/m2≦BMI<30kg/m2) の成人30名を2群に分け, 一方には1日300mLの飲用でMOSを3gが摂取できる試験コーヒー飲料を.もう一方にはMOSをコーンシロップソリッドで置換したコントロールコーヒー飲料をそれぞれ12週間摂取させた.そして, 摂取開始時, 4週目, 8週目, 12週目に医師による診察, 採血尿, 理学検査, CT撮影を行った.試験飲料群は, コントロール飲料群に比べ臍部横断面全脂肪面積, 皮下脂肪面積, 内臓脂肪面積の有意な低下が観察された.これより, 本試験飲料 (MOS摂取量: 3g/日) の摂取により, 体脂肪を減少させることができると考えられた.
著者
後藤 元信
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-8, 2018-03-15 (Released:2018-03-29)
参考文献数
27
被引用文献数
3 4

コーヒーの脱カフェインやビールのホップの抽出など超臨界流体は食品関連物質に適用されている.ここでは亜臨界・超臨界流体の基礎的特性を概説する.超臨界流体中への溶質の溶解度は分離プロセスにおいてもっとも重要な要素である.固体原料からの超臨界二酸化炭素による抽出プロセスについて説明する.脂質や精油の分離のように液体混合物の分画も重要な分野である.近年,天然物の抽出プロセスにおいて亜臨界水も適用されている.超臨界二酸化炭素と液体の水を用いたハイブリッド抽出プロセスを極性,無極性物質の同時抽出法として提案し,食品関連物質の抽出に応用した.カロテノイドなどの天然物の超臨界二酸化炭素を用いた微粒子化法について説明した.亜臨界水抽出物をその場で微粒子化する手法についても解説した.
著者
小川 剛伸
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.25-36, 2020-03-15 (Released:2020-03-27)
参考文献数
25
被引用文献数
1

乾燥過程および吸水過程における食品中の水の移動挙動は,製造時および調理時の条件によって大きく異なり,その挙動により,食品の品質は大きな影響を受ける.経験と試行錯誤に多くを頼ってきた既存の製造法では,近年の健康志向や美味しさへの飽くなき追求といった多様な要求に対して,迅速かつ的確に応えることが困難である.そのため,合理的な食品製造を可能にする体系的な理論研究が強く求められてきた.しかし,水の移動現象と移動機構,それらが食感などの品質に及ぼす影響については,必ずしも十分に解明されていないように思われる.筆者らは,粗挽きの小麦粉であるデュラムセモリナのみからなり,組成が単純なパスタを研究対象として,乾燥および吸水過程で生起する水の移動現象とその機構,品質への影響を調べてきた.本論文では,これまでに得られた筆者らの知見について解説した.
著者
酒井 昇
出版者
日本食品工学会
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.19-30, 2010 (Released:2011-03-28)

電子レンジを始めとしてマイクロ波加熱は、速く簡単に加熱・調理できることから、食品産業で良く利用されている。しかし、加熱速度が大きい半面、加熱むらも大きいなど問題も残っている。マイクロ波を照射したとき、被加熱物の加熱性を決めるのは誘電物性であることから、食品の誘電物性を知ることは重要である。本稿では、まずマイクロ波加熱の原理とマイクロ波加熱における水の役割について説明した。次に、水分濃度および塩分濃度の誘電物性に及ぼす影響について説明した。水分が減少することにより誘電率が減少し、塩分濃度が増えることにより誘電損率が増大する。最後に解凍にともなう物性変化について説明した。氷が融解するとき熱物性が変化するのと同時に誘電物性が大きく変化するため、ランナウェイ現象の原因となる。
著者
柳田 高志 清水 直人 木村 俊範
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.79-87, 2005-03-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

熱帯プランテーションで毎年大量に廃棄されているバナナ茎・葉の有効利用が重要な課題となっている.私たちは, 未だ研究報告のないバナナ葉抽出物に注目し, 有効利用の指針となるようなバナナ葉抽出物の基礎資料を得ることと効果的な抽出操作を提案することを目的とした.バナナ新鮮葉・乾燥葉の抽出成分を脂質画分, 塩基性画分, 酸性画分, 中性画分およびフェノール性画分に分画した.その結果, バナナ葉抽出物には植物性ワックス, 抗菌性物質, 抗酸化性物質といった有用な成分が含まれていることが明らかとなった.脂質画分にはワックスが多く含まれており, 果実収穫後のバナナ葉には, 乾燥重量あたり約3%の収率での回収が見込まれた.さらに, 酸性およびフェノール性画分には抗菌および抗酸化性が確認できた.また, 効果的な抽出法として, 最初に新鮮葉を用いてワックスを抽出し, その後, 乾燥処理を行ってから抗菌, 抗酸化活性を有する画分を抽出し, 残渣を繊維として利用する手順を提案した.
著者
菊池 耕士 山本 修一 四日 洋和 吉井 英文 安達 修二
出版者
Japan Society for Food Engineering
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.169-175, 2013-12-15 (Released:2015-06-18)
参考文献数
16
被引用文献数
8 16

魚油や植物油などの液状脂質を食品高分子(包括剤または賦形剤という)の濃厚水溶液とともに乳化し,得られたO/Wエマルションを噴霧乾燥などにより急速に脱水して,微小な油滴を包括剤の乾燥層で被覆する技術を脂質の粉末化という.液状脂質を粉末化すると,脂質の酸化が抑制されたり,油相に含まれる芳香成分の放散速度が制御できるなどの利点がある.脂質を粉末化した際に,表面に露出した油の割合(表面油率)は,酸化や放散のされやすさの指標となり,一般的には,この値が低いほど良好な粉末化物といえる.粉末化物中の脂質の割合(含油率)が少ないほど,脂質の酸化が実質的に停止する未酸化率が高く[9],また油滴が微細なほど表面油率が低いことが報告されている[12].前者の現象に対して,浸透理論[14]を適用した解析が試みられている[9].近年,油滴の微細化技術が進展してきた.そこで,粉末化する際の油滴径が表面油率に及ぼす影響を傾向的に知るため,2次元または3次元の浸透理論を適用して検討した.また,乾燥条件により粉末化脂質は内部に空隙ができることがある.そのような中空粒子の表面油率についても検討した.2次元および3次元モデルでは,正方形または立方体の一辺をそれぞれNo分割し,No2またはNo3個の格子を考え,乱数を発生させることにより,粉末中の脂質の体積分率に対応するように脂質が存在する格子を決定した.2次元および3次元モデルではそれぞれ,表面に接する格子の脂質と辺または面で接する格子の脂質は抽出されると考え,脂質が存在する全格子に対する表面から連結している格子の割合を表面油率と定義した.中空粒子では,正方形または立方体の内部に一辺の分割数がNiの正方形または立方体を考え,その比Ni/Noをパラメータとして,中空の大きさが表面油率に及ぼす影響を検討した.中実および中空粒子ともに,表面油率が急激に増加する粉末中の脂質の体積分率の閾値が存在し,2次元モデルより3次元モデルの方がその値は小さかった.また,中空粒子では,Ni/Noが大きい(中空が大きい)ほど,表面油率が大きくなった.外辺の分割数Noの逆数(1/No)は,油滴の大きさに対応する.2次元および3次元モデルともに,Noが大きいほど,すなわち油滴が小さいほど,表面油率が低く,粉末化する際に油滴を微細化することは,脂質の酸化の抑制に有効であることが示唆された.また,Ni/Noが大きいほど表面油率が高くなることより,中空粒子では脂質が酸化されやすいとの経験則に合致したが,その影響は顕著ではなかった.
著者
堀江 祐範 Supatjaree RUENGSOMWONG Bhusita WANNISSORN
出版者
Japan Society for Food Engineering
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.125-137, 2020-09-15 (Released:2020-09-29)
参考文献数
16
被引用文献数
2

後発酵茶は,茶葉を微生物(乳酸菌や真菌)により発酵させた茶で,日本やタイなどで伝統的に製造されている.このうち,日本では,四国山地および富山県において伝統的に製造されている.一方の生産地であるタイでは,後発酵茶はミャンとよぶ.ミャンはタイ北部で生産され,消費地も大部分は北部である.筆者は,2019年12月に,タイ王国北部のナーン県,ランパーン県およびチェンマイ県において,ミャン製造の現場を見る機会を得た(Fig. 2).ミャンは発酵期間によって2種類に区別される.発酵期間が数週間のものは,Miang-Faat(Astringent Miang)とよぶ.これに対して,数ヶ月の乳酸発酵を行うものは,Ming-Som(Sour Miang)とよぶ.また,製造方法の面からは,乳酸発酵のみで製造するタイプと,乳酸発酵の前に真菌による発酵を行うタイプがある.ミャンは製造工程には乳酸発酵を含み,茶葉を乳酸発酵させることで製造する.この乳酸発酵には,Lactobacillus属乳酸菌が関与している.ミャンはタイ北部の広い地域で製造されており,各地域のミャンは基本的な発酵様式は類似するものの,相違点も多い.日本の後発酵茶が発酵後の茶葉を天日乾燥し,熱湯で淹れた「茶」を飲用するのに対し,ミャンは発酵後の茶葉をそのまま食する.日本の発酵茶では,原料となるチャは中国変種(Camellia sinensis var. sinensis)を用いる.これに対して,ミャンの原料として用いられるチャは,アッサム変種(Camellia sinensis var. assamica)である.初夏に硬化した葉を用いる日本の後発酵茶とは対照的に,ミャンには柔らかい若葉のみを用いる.また,日本の後発酵茶の製造時期は製造に適した茶葉を収穫することができる7月~8月に限られるが,ミャンの製造は年間を通して行われる.チャの若葉を素手あるいは指につけたフィンガーナイフを用いて刈り取る.このとき,茶葉をどのようにとるかは,生産者により異なる.筆者が見た中では,茶葉の3分の2程度をちぎるものが多かった.一方で,全葉をとって使用する生産者もおり,長年続けられてきた生産者ごとの習慣に基づく.ミャンの製造工程の概要をFig. 3に示す.刈り取られた葉は,竹のバンドである程度の大きさの束にまとめるか,網でできた袋に入れて,水を入れた鍋が設置されたかまどで蒸される.木で出来た桶に茶葉を詰めて蒸されるが,この樽は底に穴が空いており,竹を網状に編んで葉が抜け落ちないようにしてある.蒸す行程は茶葉を柔らかくし,酵素を失活させる.蒸し時間は,約1~2時間程度である.蒸した後の茶葉を冷ましたのち,新たに竹のバンドで茶葉をまとめ,隙間なく樽や竹かご,バケツに詰めてゆく.このとき,樽やかごの中にはプラスチックバックを入れておき,この中に茶葉の束を詰め,空気を抜いた後,口を堅く閉めることで,乳酸菌の生育に適した嫌気条件を作る.そのまま,樽を数週間から数ヶ月室温で置き,乳酸発酵させると完成である.ナーン県のミャンは葉を蒸したのち,乳酸発酵の前に真菌による発酵を行う2段階発酵によってつくられる.ナーン県では,乳酸発酵に際し,塩を添加した水に浸漬する.ランパーン県では,乳酸発酵の際に,茶葉を水に浸漬するが,塩は添加しない.チェンマイ県では,乳酸発酵に際しては,水を添加せずに発酵を行う.チェンマイ県のミャン工場では,よく管理された乳酸発酵によるミャンの製造が行われている.茶葉を蒸すための水は,フィルターと活性炭処理により浄化された脱イオン水を使用する.蒸す工程はボイラーを用い,茶葉を詰めた樽にホースで蒸気を送る.茶葉は冷却した後,ビニール袋を入れた樽で乳酸発酵される.発酵期間は2~3カ月から長いもので1年に及ぶ.発酵時に水は加えない.発酵後のミャンは,マスクと手袋を着用した職員により重さが量られ,竹のバンドで縛られる.別のパッキング工場で窒素ガスを封入し,パッキングされて製品となる.ミャンの製造方法の地域差は,発酵に関与する乳酸菌の選抜に影響し,風味の違いに直結すると考えられる.
著者
堀江 祐範 杉野 紗貴子 藤本 博雄 山辺 啓三
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.71-77, 2017-03-15 (Released:2017-03-29)
参考文献数
26
被引用文献数
1

腸内環境の改善には,乳酸菌をはじめとしたプロバイオティクスの摂取が効果的である.一般に整腸作用や有害菌の増殖抑制には,摂取した菌が生存率を保った状態で腸内に到達することが重要であるが,乳酸菌が必ずしも胃での生残性が高いとは限らず,せっかくよい効果があっても,胃で死滅しては意味がなくなってしまう.一方,こんにゃくは多糖類の繊維からなる難消化性の食品で,強アルカリ性の食品であることから,乳酸菌をこんにゃくに付着させ,一緒に摂取することで生残性を向上させることができないかと考えた.製造時に発泡させることで表面積を大きくした球状のこんにゃくに,Lactobacillus crispatusおよびL.plantarumを取り込み,pH 1.2の人工胃液中で保持した.こんにゃくがない場合には,これらの乳酸菌は30分で死滅したが,こんにゃくと一緒に保持することで,60分及び120分後まで生存が認められた.本技術により,乳酸菌をこんにゃくと一緒に摂取することで,生存率を保ったまま腸管に届けられる可能性が示された.